第19話「1万って……1万ってねぇ?」

「1万って……1万ってねぇ?」


紗奈はベッドの上でスマホを掲げてワナワナと震え、パタリと横になった。

そんな紗奈の頭を撫でながら僕は紗奈に尋ねる。

「なにが1万?」

「これよ!」


紗奈は素早くスマホでカクヨムを開き、カクヨムコンを見せる。


「あ〜」

応募数1万越え。

短編の方も同じく1万越え。


「すごいね」

「すごいのよ」

紗奈はそう言いつつ、カクヨムを閉じてパタリと倒れる。


「……もはや万に1つの可能性に賭ける世界となったのよ。

すでに8回目。

年々人は増え、初回は1600ぐらいだった競争率が約6倍。

恐ろしい世界ね……。

かくなるうえは作者としてではなく、1つでも多く胸躍らせる英傑の作品が生まれることを祈るのみ。

心に癒しを〜。

疲れたわぁ〜」


「お疲れ」

僕は紗奈の頭を撫でる。


「こういうときはやけ食いしたり、とにかく惰眠を貪ったりするのよ〜。

全てを超越した素敵な作品の更新さえあれば癒されるのに〜。

出よ、英傑!!


……しょうがないから颯太エネルギーを吸収するわ」


まあ、ようするにいつも通りである。

僕らはそのままなにを言うでもなく口を重ねる。


もきゅもきゅ。

もっきゅもっきゅもっきゅもっきゅ……。

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