第17話「疲れていると書こうとする気力がなくなるのよ」
「疲れていると書こうとする気力がなくなるのよ」
紗奈はスマホを片手に起き上がったり転がったりしながらカクヨムを見ている。
もちろん見ているだけでなにかを書いたりはしていないようだ。
「とりあえず休んだら?」
疲れているんだから、疲れをとってから考えたらいいのだ。
休まなければいつまでも疲れは取れないし書く気持ちも湧かないことだろう」
「それもそうね!」
紗奈はスマホを枕の上に置いて、僕に抱きつき押し倒す。
んふふと上から僕を覗き込むように妖艶に笑う。
僕がその頬に触れると、それを合図に垂れた髪を指でついっと耳の後ろにかけながら唇を重ねてきた。
もきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅ……。
見つめあったまま互いの口が離れる。
その口元を指で優しく拭ってあげる。
それから紗奈を楽な姿勢になるように横たえ、今度は僕が上から紗奈の唇を啄むように重ねて唇をわって紗奈の口の中の舌を絡めとる。
もっきゅもっきゅもっきゅもっきゅ……。
しばし……。
紗奈はぼ〜っとしながらスマホでカクヨムを見ている。
「ねえ、どうしてもっきゅもっきゅと入力すると、『メラクルノ』って変換が出るのかしら?」
それは知らない……。
紗奈は言葉をさらに続ける。
「最近またもきゅもきゅが激しくなって来たけど、私は黒歴史としてシーズン1を非公開にした意味があったのかしら?」
「……非公開にしてももきゅもきゅを晒している時点で、シーズン2も勝手に黒歴史化するんじゃない?」
「……そうよねぇ」
紗奈は困ったわぁ〜と頬に手を当てる。
「……とりあえず颯太と唇を重ねてみるわ」
「……なんであえて宣言してるの?」
「……なんとなく?」
紗奈も意味もなく口に出してみたようだ。
……いつも通りだね。
とりあえずそれを僕らがしない理由にはならないので、おもむろに僕らは唇を重ねる。
触れ合うものから、ついばみすり合わせつものへ。
我慢できなくなって互いにしがみ付くように、口を重ね出すのに数秒の時間しかかからなかった。
息がかかる距離のまま、少しだけ口を離して紗奈は言う。
「……とりあえず今日はこういう日だと割り切るわ」
「……うん、それでいいんじゃない?」
そしてすぐに僕らは口を重ねる。
もっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもきゅちゅう……。
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