第14話「書いたわ!書いてしまったわ!!」

「書いたわ!書いてしまったわ!!」


紗奈は唐突にそう言いながら、ベッドで両手を広げてバンザイをした。


「3000文字3時間!

一気に書き切ってやったわ!

でもそれって公爵の話とか私たちの話とか更新する時間を費やしているのよ!」


さらにそう言ってぱったんきゅ〜とベッドに転がる。

元気な妊婦だ。


「書いたって、これ?

ぬまりぬまらせの話?」


ぱったんきゅ〜した紗奈の頭を撫でながら僕はカクヨムを見る。


「そうよ〜。

勢いのままにやってしまったわ。

企画者は絶対、この沼らせ相手と向き合う人との切ない恋とか、そういうのを求めているのが説明からありありと伝わるわ。

でもしょうがないじゃない。

私、そういう人に恋する気持ち、まったく理解できないんだから」


「あっ、言い切ってしまったね」


「しょうがないじゃない!

こういう感じに実は両想いの話で沼らせでもハッピーエンドじゃないと書けないわよ」


そう言いながら紗奈は僕によじ登るようにして肩にあごを乗せて、一緒にスマホをのぞき込む。


紗奈の顔が近くに来たので、そのまま横を向いて紗奈の口に口を重ねる。


もきゅもきゅ。


「どう?

少し大人の作品になっている気はするわ」

「うん、僕らの話と大差ないね?」


「それは消えた黒歴史シーズン1のことよ。

とりあえず颯太に口封じしとかないと」


そう言いながら、紗奈から口を重ねて舌を絡める。


もっきゅもっきゅもっきゅもっきゅ……。


うん、現在進行形で晒してるよね。

紗奈は口を離して、しげしげと自分の作品を読み返す。


「無意識だったけど、この沼らせ男。

颯太になんとなく似てるわね?

他の女のところに行くなんて許さないけど」


「この沼らせ女も紗奈に似てるよね?」


そう言った途端に紗奈は口を重ねてくる。

ようするに口封じらしい。


もっとも僕らがこの2人のように他の相手と付き合ったりすること自体がそもそもないわけだけど。


それでもまあ、こういうこともかかるようやはある。

(他の相手と付き合ったりすることはあるだろうか、いいや、ありはしない)


そういうことかなと思う。


もきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅ……。




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