第13話「寒いとみんな活動しなくなるわね」

「寒いとみんな活動しなくなるわね」


紗奈はいつも通り僕にべったり引っ付きながら唐突にそう言った。


「どういうこと?」

「お気に入りの話が更新しなくなっているの」

「みんな忙しいんだろうね」


「そうなんでしょうねぇ〜、私も余裕があるわけじゃないし、隙間時間あってもテンション上がらないことも多いし、ままならないわぁ〜」


そう言いながら紗奈はこちらを向く。

そのときに自然と紗奈の口元に目がいきゴクリと喉を鳴らすと、紗奈は蠱惑的な目をして僕に微笑する。


それだけで頭の中が空っぽになって唇を重ねに近づく。

紗奈は口を薄く開いて、近付く僕をジーッと見る。


近づいてはこないけど、逃げようとはしない。

逃げようとしても今の僕は捕まえにいってしまうことだろう。


そのまま近付くとどうなるでもなく、唇が重なる。


「んっつ」

薄く開いた口から紗奈の吐息がわずかに僕の口の中に流れ込む。

それはとても甘美な味に思えて僕は紗奈の舌を探りに、自分の舌を口の中に投入した。

柔らかく温かな感触が脳髄を刺激して、あらゆる一切がその紗奈との感触だけを求める。


もきゅもきゅもっきゅもっきゅ……。


ひとしきり互いの口を重ねたあと。

紗奈は口元を軽く拭きながら。


「それはそれとして、最近、なろうテンプレへのモヤモヤがなくなったわ」

「うん、すごい流し方だね」


口を重ねるのはいつも通りだが、話の変え方が……いつも通りか。

そういえばいつもこんな会話の流れな気がする。


「なんでモヤモヤがなくなったんだ?

転生物とかテンプレに悶えてたよね?」


書き方の問題からか紗奈はテンプレを書くのも苦手だったはずだ。


「あるエッセイを読んだけど、まさに目からウロコの真実に至ったからよ。

なろう系って民話とか説話だったのよ」


そこから紗奈がスマホでカクヨムを開き、説明してくれた。


曰くテンプレと呼ばれる転生やら巨大な力でウンタラカンタラ、力ある者の気まぐれの救済など、古来より民話や神話の中で多く使われた手法である。


言われてみれば、である。


「なるほど……そう定義してしまえば腑に落ちる点も多い」


「そうなの。

そもそもライトノベルの一部と思っていた時点で視点が間違っていたの。

それらを説話として捉えるならば、なるほどと理解できるところが多いの。

根本的にステージが違うわ。

とーーーーーーーーっても納得がいったわ。

……とまあ、納得したところで、颯太カモーン!」


まだするの、とか。

唐突過ぎない!?とか僕は言わない。


僕が紗奈の誘惑から逃れられるわけがないのだから。


紗奈は誘うように目を細め僕にしがみ付く。

そうして奪うように僕の唇に自分の唇を重ね合わせて唇でもてあそぶ。


紗奈が感触を楽しんでいるところを我慢できなくなった僕が舌を絡ませ……。


もきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅ……。

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