アフター17話「そういうことなのね、カクヨム……」

「そういうことなのね、カクヨム……」

「あーうー」

紗奈はベッドの上で姫奈を抱いて座り、部屋の壁の向こうを眺める。

それははるか空の向こうを眺める冒険者のように。


姫奈も紗奈に手を伸ばしている。

可愛い。


「それでどういうこと?」

僕は紗奈の隣に座り、指を姫奈に近づけると両手で姫奈がその指を捕まえにくる。


隣に座ったことで顔が近くなった僕らはどちらからともなく口を重ねる。

もきゅもきゅ。


おっと、これを見て姫奈がマネしないようにしないと。


「カクヨムコンの真実に気づいてしまったわ」

「それは『その年の』流行を求めているということではなく?」


「それはすでに前提ね。

今年の……いえ、カクヨムの狙いは『英雄を作ろう』としていることよ!」


英雄は作られ、勇者は生まれる。

英雄とはときの権力者により作られる人身御供である。

それは権力の一端と繋がるので、必ずしも不幸とは言わない。


されど人はそれでも幻想を求める。

人を導く勇者を。


それはともかく。

カクヨムの英雄とは?


「英雄?」

「絶対的な英雄をカクヨムは生み出していると思う?」


「あー、なろうからは生まれているね、テンプレの素になる作品。

でもその年の流行……テンプレの上で踊っているから、少なくともカクヨムコン内ではその枠は出ないよね?」


「そうね。

他に意図はあるのでしょうけど、かつてカクヨムはサポーターシステムを作り出したときに言ったわ。

カクヨム内で書く人が十分な収益を得られるようにしたいと。

それはあくまでも一部の選ばれし者を選定したいということでもあるのよ。

全てのリソースに限りがあるから」


印刷業もそうだけど、ライトノベル界隈はさらに収益が縮小しているという。


それはライトノベル作家で生活ができるのが、一部の例外を残すのみとなっていることからもわかる。


「それを今回のカクヨムコンで『作り出そう』と?

それを意図的に作るのはよほど上手にしないと」


上手くいけば新たな扉を開く可能性はある。

ただ疑問があるのは……。


「作られた英雄で『魔王』は倒せるのかな?」


「無理でしょうね。

作られた英雄は所詮、作られたもの。

常人を遥かに超える力を持っているでしょうけれど、それはあくまで人の中で。

新しい『扉』を開く鍵にはなり得ないわ。

あるいは英雄たち自身が気付き、覚醒するならあるいは……」


「あーうー」

紗奈は遠い目をしながら天井を見上げる。

ついでに姫奈も天井を見上げてる。


……なんの話してたっけ?


「つまり紗奈はカクヨムコンの真実に気づいた、と?」


「フッ、颯太。

そうやって結論を急ぐのが男の性分よ。

女の性分はね、ただ話したいだけなのよ……」


「ああ、うん」

つまり特に意味はないということらしい。


とりあえず僕は姫奈を抱いて、抵抗できない紗奈の口に自分の口を重ね、舌を重ねておいた。


もっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅちゅっ。

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