第46話「これが幼馴染育成計画のお話よ!」
「これが幼馴染育成計画のお話よ!
あ、主人公の名前を決めてないから、登場するのは幼馴染の男の子、女の子の2人だと思ってね。」
そう言って紗奈は僕にへばりつきながら、スマホで書いた小説を見せてくれる。
タイトル『幼馴染育成計画』
「好きだ」
ずっと好きだった幼馴染の女の子に、以下略。
「……ふむ。
それはやぶさかではないね」
やぶさか?
僕の告白に対して幼馴染の女の子はブフッと吹き出し、すぐに顔を背けだらしない顔でぐへへっとニヤけている。
「付き合うのは無理ね」
でも返してきた返事はその反応とは正反対のもの。
「……そうか」
両想いだと思っていたが、それは気のせいだったか。
「……えっ?これで諦める?」
だけど僕の反応が気に食わなかったのか、幼馴染の女の子は首を傾げる。
「そりゃあ、嫌な想いをさせたいわけじゃないからね」
「えっ、そんなことになったら大泣きするわよ?
それを一生慰めてもらうわよ?
……あ、じゃあ、ちょっと待ってね」
悩む幼馴染の女の子。
あごに手を置き、むむむと。
「一応確認だけど、付き合った場合は結婚までする覚悟があるということでよろしいか?」
なんでそんな言い方なんだ?
とにかく普通のお付き合いを求める場でそこまで飛躍する高校生はまずいない。
居ないが……。
「今は生活ができないから無理だけど、いつか結婚して僕の子供を産んで貰いたいと思っている」
「……なるほど。
愛ゆえに諦める選択肢を私に置いてくれているだけなのね。
余計な気遣いだけど、俺様のグイグイ系は嫌いだし、彼のそういう優しさが好きなのもあるし……、でも肝心なところで引くようではダメだから、そこをわかってもらって……」
そして、ぶつぶつとなにかを悩む。
そうしつつも、待ってね、と僕に声をかけながら僕の手を逃すまいと掴む。
「あ、さっきの付き合うのは無理っていうのは一回撤回してね?
私、まだ返事をしてないということで」
ついにはうーんと唸りつつ、さらに僕の腕を逃さないように両腕で抱える。
柔らかさが伝わり、心臓の音がバクバクと跳ねる。
それが伝わってしまうのではないかと動揺するほどに。
「よろしい、ならば試練を乗り越えられよ!」
「試練?」
「そうそう、ほら、付き合ったりするのってイチャイチャしたいからってのもあるかもしれないけれど、その人を改めてよく知るために付き合うところもあるでしょ?
でもほら……、付き合ったりしてこう〜身体も捧げて、心も捧げたのに、やっぱり私たちはダメだったねぇとか。
一般的かもしれないけれど、切ないでしょ?
だから、そうならないように初めからイイ男になっておけばオールオッケーじゃない?
ゆえに試練を乗り越えイイ男になれば、晴れて交際を認めようぞ!!」
「わかったけど、その言い方、なに?」
「えっ?
試練といったらこんな感じでしょ?
あ〜、そうね。
試練というと乗り越えられなければ付き合わないとかそう言われても泣いちゃうし、こう言い換えましょう!
これは幼馴染育成計画よ!!」
よくわからないけれど、この日、僕はフラれたらしい。
代わりに幼馴染育成計画に乗ることにした。
「それと契約書にサインをしてもらうべきか考えているのだけど、どう思う?」
契約書というからには本気度が伝わるというものだ。
「ちなみにどういうもの?」
契約書というのは、高校生ではピンと来ないけれど、とんでもなく重たいものだとはわかる。
「これよ。
契約書といっても条件みたいなものは書いてないわ。
サインするだけで法的にも私たちの契約が認められる優れものよ。
サインさえしてくれれば、あとはこちらで枠は埋めておくわ」
そうして渡された契約書は……婚姻届だった。
「18歳にならないと有効にならないから、正式な契約は2人の誕生日後ね」
この日、よくわからないけれど僕はフラれたけれど、好きな幼馴染の女の子と18歳になったら結婚することになったようだ。
……どういうこと?
……。
…………。
僕は読み終わって紗奈を見る。
目をキラキラさせながら僕を見ているのでとりあえず口を重ねておいた。
もきゅもきゅ。
口を離すと紗奈はどう?と感想を聞いてきた。
「もきゅもきゅは相変わらず甘美だね?」
「もきゅもきゅはそうね。
そうじゃなくて!」
「うん、やっぱりラブコメとしては終わってるよね?」
「そう?」
「……それに内容がほぼ僕らじゃないかと」
「……キ、キノセイヨ」
うん、まあいいか……。
とりあえず僕はもう一度紗奈の口に口を重ねる。
紗奈も大人しくそれを受け入れて。
もっきゅもっきゅもっきゅもっきゅ……。
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