第45話「今こそラブコメ界に躍り出るのよ!」

「今こそラブコメ界に躍り出るのよ!」


紗奈はスマホでカクヨムを読んでいた紗奈はベッドの上で拳を天井に振り上げ、唐突にそう言った。


「紗奈……、それはいいけど時間はあるの?」

僕が尋ねると紗奈はゆっくりと横向きに倒れた。


振り上げた拳はヘナヘナと揺れ落ちる羽根のようにパタリと。


まあ、今更か。

僕はため息一つ。

息抜きしたい気持ちは誰にでもあるものだから。

「それでどんな話が浮かんだんだ?」


紗奈はパッと顔を輝かせて起き上がる。

「その名も幼馴染育成計画よ!」

「ふむ」

なんとなく面白そうな気はする。


どう育成していくのかとか、紗奈の考えだから純愛物だろうから、悪い話にはならない気がする。


「幼馴染を育成して結ばれる話ってことかな?」

「そうよ!」

「まあ、育成物というものは前々から無くはないね。

ただ、ちょっと紗奈の好みからは外れてない?」


大体のそういう話は、ちょっと見かけを変えるだけでモテだすという摩訶不思議な話が多い。


美容院行って髪切ったらイケメンで、ポッとされるとまどろっこしい展開はなくお手軽だけど、小説慣れしている人からすると非常に物足りない。


文章の構成次第ではげんなりすることもある。


「そこは現実に沿っていくべきね。

やはり地道な努力こそが人を輝かせるものよ」


それはそうだ。

しかし、ネット社会ではわかりやすいものが求められるのも、また事実。


努力根性は流行らない。

流行らないということは人気が出ない。

それが良い作品であろうとも。


それでも自らの書きたいものを書く、それが紗奈の選んだ道のはずだ。

ゆえにラブコメランキングを駆け上るのとは矛盾してしまう。


僕は改めてそこを紗奈に確認する。

「もっともね!

だから私は考えた!

メインは育成なのよ。

なので1話目に幼馴染の男の子が女の子に告白して、そこから男の子を生涯に渡って育成していく話なのよ!」

ふむふむ、出だしはいいとして……。


「生涯に渡って……?」

「幼馴染に告白したのよ、2人は両想いを確認し合ったに決まっているじゃない。

そこからは生涯を共に過ごすに決まっているじゃない」


「ラブコメとしては1話目で終わってない?」

「じれじれだけがラブコメじゃないはずよ!

多分……メイビー……。

それともなに!


将来を誓い合ってもないのに、幼馴染同士で付き合う気!?

そんな精神性だから寝取り浮気されるんじゃない!?

男も女も!

幼馴染といつか別れるつもりで付き合う気なんて、女神が許してもこの私が許さないわ!!」」


紗奈らしい話だった。

そんでもって紗奈が自分の話に興奮しだしたので、大人しくさせるために口で口を塞ぐ。

「もごっ!?」


唇を重ね、舌を重ねるとすぐに紗奈は目をとろ〜んとさせて、僕にしがみついて口の中を味わう。


なのでいつも通り僕らはそのまま……。

もきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅちゅっつ。

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