残り110日その2「久々にラブコメ読んだわ」

「久々にラブコメ読んだわ」


紗奈がわざわざ僕の椅子のところまで来て、後ろからしがみ付きながら唐突にそう言った。


僕は後ろから覆いかぶさるように抱きつかれて、はてなマークを浮かべながら問い返す。


「そうなんだ。

どうだった……んっぐ」


もきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅ。


何故か、顔を紗奈の方に振り向けさせられて口を奪われた。


「紗奈?」

更なるはてなマークを浮かべていると、手を引かれベッドに連れ込まれる。


そのまましがみ付かれて、また口を奪われる。


もきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅ。


「……面白かった」

「ああ、うん。面白かったんだ、それは良かっ……んっぐ」


もきゅもきゅもきゅもきゅ。


もう一度、一方的に口を奪われたけど、口を一旦離したところで、今度は僕から紗奈の口を奪い返した。


もっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅ……。


「ちょっ、颯太、ストップ!

止まらなくなる!」


そう言って、もきゅもきゅはもうおしまいという合図だろう、軽いキスを僕の唇に落とす。

「うん、そうだね」


僕はそう言いながら紗奈の唇を啄むように数度。

やがてお互い無言になって唇を重ね合って……。





……。


ベッドで2人で転がって、紗奈はスマホでカチカチと何かを打っている。


「うーん」

文字を打ち込む手が止まり、紗奈がゴロゴロと転がりだす。


「そう言えば、さっきのラブコメ読んでどうだったんだ?」

「あー、あれねー」


そう言って紗奈は僕の唇に軽く唇を重ねる。

「良かったわよ。

ただ軽いハーレム話じゃなかったから、話は重かったわ。

軽いハーレムの話だったらそもそも読まないからそれは良いんだけど」


そう言いつつ、唇を重ねてくる。

むぐむぐ。


「……けど、主人公にトラウマがあったり、主人公を好きな女の子たちも重い過去があったり、あと幼馴染は最終的にフラれた?

うーん、別の人と結婚したかな?

あ、ヒロインと主人公は結ばれたからハッピーエンドよ。

ちゃんと皆幸せになったから。

だけど、何というか……重かったのよ。

全体的にはラブコメなんだけどね?」


……という話をお互いにむぐむぐ、もきゅもきゅしながら時間をかけて説明してくれた。


「なんというか、軽ーいハーレムラブコメは読む気はしないから、ちゃんと現実を見たラブコメの方が良いんだけど、それとは別に気楽な幼馴染ラブコメが読みたいわね。

脳みそ空っぽに出来る感じに」

「そうなんだ」


言いつつ、僕らは唇を重ねる。

正直、今日は色ボケしすぎだと思う。


そして紗奈はおもむろにスマホをまた手に取り、カチカチ。

アイデアが浮かんだらしい。


「えいっ」

そう言って公開ボタンを押したようだ。

推敲しなくて良かったのかな?


「そんな訳で今の私たちのイチャイチャを晒しておいたわ」

「なんで!?」

「……愛し合ってる幼馴染の話が読みたいのよ」


いやいや、晒す理由になってないから!


「肝心な部分はぼかしているからそれで良いでしょ?」

「いやいや、何度も言うけど、もきゅもきゅは晒していいレベルでは……」

「えーい、それ以上は口封じだー!」

「むぐっ」


もっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅ……。

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