82日目「何を書きたいか忘れたわ。」

「何を書きたいか忘れたわ。」


僕のベッドの上で、仰向けに寝転がりながら、スマホで小説を書いていた紗奈さなは唐突にそう言った。


僕は椅子を少しだけ回転させ一言。

「そんな時は寝なさい。」


紗奈はその状態で足をバタバタ。

通称ゴキブリ体操である。


「昼間にはアイデアがいっぱいあったのぉ〜!

颯太のお部屋に帰って来たら、忘れちゃったの!」


「そうか、そうか。」


僕は今日のノルマを終え、さらに進めるかどうか考える。

「そういえば、気になる小説があったのよ。」

紗奈はスマホをいじり、こちらに画面を向けた。


「これよ!」

「どれどれ?」


僕は椅子を移動させ、スマホを覗く。

「新たなイチャイチャの教導者の登場よ!」

「ああ、カ◯ヨ◯コンの画面から懐かしのピックアップに変わったのか、興味深いのが出てくるね。」


ふむふむ、ヤンデレにしたいってノリか。

ガバッと紗奈は起き上がる。

「この中に非常に素晴らしい提案が書いてあったわ!」

元気よく起き上がった紗奈の顔を見て。

ヤバイなぁとは思いつつ、紗奈の頬に手を添え、ゆっくり唇を重ねる。

ふっくらとした感触で、互いにぽ〜っとしてしまい、『いつものように』そのまま口を重ねる。

もきゅ。


「、、、颯太。私たち、ちょっともきゅもきゅし過ぎ、みたい。」

「、、、そうかもしれないね。

どうしよっか?」

お互いに、たははっと苦笑い。

止めなきゃなぁ、と思いながらお互いに止められないのだ。


「、、、ちょっと気をつけよっか。」

「、、、そうだね、気をつけよ、でも、颯太、今日はもう一回だけ。」


もきゅもきゅもきゅもきゅ、、、。


「、、、ということで、颯太!これよ!」

紗奈が顔を赤くしながら、スマホをわざとらしく見せる。

そうだね、と僕は優しく笑い紗奈の額にキスを落とす。


「、、、もう!キスじゃないわ。

膝枕よ!」

成る程、膝枕。

「、、、したことなかったっけ?」

「あったっけ?」

あったような、、、?


「まあ、いいや。おいで、颯太!」

紗奈が手招きするので、僕は大人しく紗奈の膝で寝転んだ。


「、、、これ、なんかいいね。」

「でしょ?由緒正しきイチャイチャよね。」

そう言いながら、紗奈は僕の髪を撫でる。


寝そう、、、。

うつらうつらする僕の頭に紗奈はそっとキスを落とす。


「おやすみ、颯太。」


、、、うん、おやすみ、愛しい紗奈。

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