第70話「私は今日は書きたくないのよぉぉお!」

「私は今日は書きたくないのよぉぉお!」


紗奈はベッドの上で両手を挙げて唐突にそう言った。


「な、なんだってぇえええ?」

そうは言い返してみたものの……。


「……だったら、書かなかったら良いだけなんじゃない?」


この完結して最終回を迎えたはずのもきゅもきゅ幼馴染も。

一体、いつ終わるんだろう?

実は終わってる?


終わりとは何か?

そういえば、そもそももきゅもきゅ幼馴染はラブコメが終わった後のお話だから、最初から終わっているようなもの?


なんだ、ではなにも問題がないな。


僕が心の中で色々と自己完結したところで、タイミングを見計らったように紗奈は言った。


「でも書きたいのよ。

そんでもって読みたいのよ」


「うんうん、毎週木曜日はいつもそんな感じだね?」


僕の返事が納得いかなかったのか、べしべしとベッドを叩き不満を訴える紗奈。


「今週は火曜日からなんだかとってもしんどかったのよ!」

「うんうん、そういう週もあるよ」

「むきー!

罰としてもきゅもきゅを要求する!」


罰としてってなんだろう?


「罰ではないけどもきゅもきゅするよ」

そう言いつつ、ベッドの紗奈の隣に座る。

「……ん」


紗奈も大人しく僕の口を受け入れ、僕らは口を重ねる。


もきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅちゅっちゅっ。


口を離すと紗奈はグデーンといつも通り僕にもたれかかる。


「アイデアがあるのー、神原さんは拝みやさんというキャラクター文芸なミステリーのアイデアとかリメイクのやつとか、ロボットファンタジーとか〜。

でも書く気力が湧かないの〜」


「うんうん、それはどうしようもないね。

おやすみ」

そう言いつつ、紗奈の頭を優しく撫でる。


「いやぁ〜、寝かしつけられる〜」

そんなやり取りをしつつ、僕らはまた口を重ねる。


もきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅ。


うん、いつも通り。

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