208日目「颯太。私は勘違い系のスペシャリストになるわ!」

「颯太。私は勘違い系のスペシャリストになるわ!」


先程まで僕らのベッドで転がりながら、ぽちぽちとスマホで小説を書いていた紗奈は唐突にそう言った。


「勘違い系?」

「そう勘違い系。」


僕はいくつかの小説を思い浮かべる。

「あー、あの詐欺師系?」

「そうそう、それ系。」

「ふーむ、あれかぁ。確かに紗奈が好きなジャンルだね。

あれ?でも紗奈。今、長編書いてなかった?」

紗奈は分かりやすく目を逸らす。


僕は机の上を片付けて紗奈の隣に座り、頭を撫でる。


「私はね、颯太。

勘違い系が好きなの。」

「そうなんだろうね。

そうでないと書かないよね。」


「幼馴染系と同じぐらい好きなの。

でも書籍化されて止まったり、書籍化された瞬間そのまま消えていったり、勘違い系は、、、燦然と輝きながらでも潤沢とはいかないわ。」


「勘違い系はなろう系に代表されるテンプレとも少し違うからねぇ。」


紗奈は転がりながら僕の腰にしがみ付く。

「読みたいの!特にカ◯ヨ◯では勘違い系が殆どないの!

だから仕方ないから書くの!」


紗奈はスマホを見せる。


「、、、書き出したんだ。

でも、長編の方は良いの?」


紗奈はもそもそと僕の身体に登るようにのしかかり口を口で塞ぐ。


もきゅもきゅ。


「ふー、危ないところだったわ。

颯太が余計なことを言いそうだったから口を塞がせてもらったわ。」

「あ、うん。良いけど。」


「私はね、颯太、気付いたの。」

「何を?」

「私はシリアスな作品を書いている時は、同時並行で頭空っぽの作品を書く方が捗ると言うことよ!」


「あー、だから長編書きながら、思い付きっぽいラブコメ書いてたのか〜。

うんうん、ところで紗奈。

今書いてる長編ってシリアスだっけ?」

「え?シリアスじゃない?」

「え?」

「え?」


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