717日目(残り13日)「チャンポンコーラは美味しいはずよ」

「チャンポンコーラは美味しいはずよ」


紗奈が白っぽくて薄黒くて、ちょっと黄色の混じった液体をペットボトルに入れて持って来た。


「確実にアカンやつだね……」

「冷蔵庫に炭酸の抜けたコーラとカルピスとオレンジジュースが微妙に残ってたから、混ぜて持ってきた」


どう聞いてもアカンやつだった。

紗奈はそれを恐れもせずグイッと。

コーラの炭酸抜けている時点で、イマイチ感が凄いはずだが。


「……まっず」

「そりゃそうだ」


紗奈はそれを僕に見せる。

「飲む?」

「……いや」

「口移しで飲ませてあげようか?」

「……飲む」


紗奈がチャンポンコーラを口に含み、それを口移しに受け取る。

口への流し込みは慣れたものというか、滲ませるように少しずつ口の中で生温くなった液体が移ってくる。


その液体そのものは、想像以上に飲み物じゃないと感じる。

液体をゴクリと飲み干し、そのあとの絡ませた舌がそのエゲツナイ後味を消してくれる。


もきゅもきゅもきゅ。


「……つくづく思うけど、口移しって愛がないと無理なものだよね」

口移しで飲むと、ただの水さえも生温くして美味しいとは言えない味になる。

「その後のもきゅもきゅは美味しいんだけどねぇ〜」


それでも僕は催促する。

「もう一度おかわり。

今度はチャンポンコーラ抜きで」

「それって〜……うん」


笑いながら言葉を続けようとして、紗奈は僕の目を見て言葉を止め、少し恥ずかしそうに頷いた。


髪が邪魔にならないように髪を耳にかけてから、手に持っていたチャンポンコーラを置いて、上から覆い被さるように口を重ねる。


もきゅもきゅ。

繰り返し、互いに求める。


「んっ」

少し口を離し息継ぎをする。

紗奈は荒くなった息を少し整える。


紗奈の目がトロンとしていて、そんな隙を僕が逃すはずもない。

紗奈の口元を指で優しく拭って、その背に催促するように軽く押すと、紗奈も覚悟を決めたように頷く。


この後で僕らが唇を重ねたらどうなるか分かっていながら。

紗奈はゆっくりとマシュマロがとろけるようなキスと共に、口を重ねていく。


もっきゅもっきゅ。

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