211日目「、、、私はすっかり変わってしまったのよ。」

「、、、私はすっかり変わってしまったのよ。」


紗奈は僕らのベッドにパタンと倒れ込んで唐突にそう言った。


僕はいつものように椅子を回転させた。

「どうしたの?」


紗奈はベッドに埋もれたまま、フフフと乾いたような笑い声を出す。

「昨日、面白いと思う作品が見つかったって言ったでしょ?」

「あ〜、紗奈がいじめてと言ってきたやつね。」

「いじめてなんて言ってないわよ!

綺麗な心になるからお仕置きしてと言ったの!

なのに颯太がイチャイチャのもきゅもきゅをして、、、。

、、、だからその、もういい!」

ぷいっと反対を向く。


僕は苦笑して、机の上を片付けて紗奈の隣に座り紗奈の頭を優しく撫で、髪にキスを落とす。


「、、、もきゅもきゅしてくれたら許してあげる。」

「はいはい、お姫様。」

顔を近付けると応えるように、紗奈も顔をあげる。

「んっ。」

唇をしっかり重ねてから。


もきゅもきゅ。


口を離すと、ふ〜と紗奈は息を吐く。

その様子から見るに許してくれたようだ。

「それで何が変わった?

1年前とは変わってると思うよ?」

「そんなに変わった?」

紗奈が首を傾げる。


「うん、イチャイチャ幼馴染の1日目と今の僕らのやりとりを比べてみるといいよ?」

「、、、まだ禁断のもきゅもきゅの味を知らなかった頃ね。

一度口にしてしまった禁断の果実は、もうそれ無しでは生きられる気がしないわ。」


まあ、、、そうかもしれない。


「でも、とりあえず今はそのことじゃないわ!

昨日面白い話を見つけたと言ったでしょ?」

「言ったね?良かったじゃないか。」

「それが良くないのよ。

確かに読みやすかったんだけど、読んでたらリバーシと鑑定ネタが入った時点で急速に冷める感覚がしちゃって。

もうその手のテンプレが受け入れられない身体になってしまってるの、、、。」

紗奈はばたりとベッドの上で力尽きる。


「あー、結構、前の作品とか?」

「スタートは昨年末だからそこまで古くないわ。

でもその時期にはすでに定番テンプレに飽きてたから見るだけで、ああ、展開読めるからもう良いかなって、、、。

汚れているのは私の心なのよ〜。」

さめざめと泣いているふりをする紗奈。


「あー、まあ、好みだから。

昨日も言ったけど評価云々より自分が面白いと思うかどうかだし。

それに悪い作品ではないんでしょ?」


「そうね、展開に抵抗があるだけで読みやすくて良い作品と思うわ。

私がテンプレに拒否反応を示すようになっただけで。

、、、ふふふ、私は汚れてしまったのよ。」

「汚れって、、、ただ単にテンプレに読み飽きただけだよね?」

「そうとも言うわね。」


紗奈は何かを求めるように両手を伸ばす。

何かってもきゅもきゅだけど。


「こっちのテンプレは飽きないよね。」

「飽きないわね。幼馴染作品が飽きないのと一緒で好みによるんだと思うわ。」

そうして僕らはいつものように口を重ね、、、。


もきゅもきゅ、、、。

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