193日目「なんで書いているんだろうと思ったわけよ。」

「なんで書いているんだろうと思ったわけよ。」


今日は休日なので、最初から紗奈とベッドの上で2人でゴロゴロしていると紗奈はスマホでネット小説を読みながら、唐突にそう言った。


どこか寂しそうなその言い方に紗奈の頭を撫でながら尋ねる。


「どういうこと?」

「カ◯コンの結果が出たでしょ?

結果はダメだったけど、私自身は全然期待してないつもりだったのよね。

良い作品もいっぱいあるし。」


僕は特に何も言わずに紗奈の頭を撫でる。

「、、、でも、結果を見てなんとなく、あ〜、これってどうして私は小説を書いてるんだろ?と思っちゃったんだよね。


書籍化はなれば良いなぁ〜ぐらいに思ってたけど、コンテストとか見ると極端に言うと作品が否定された気分がしたのよね。

その結果が出て初めて、あ、コンテストに出すんじゃなかったとか思っちゃった訳よ。」


「、、、そんな感じなんだ?」

紗奈はコロンと転がって僕の腰にしがみ付く。


「ん〜、今のは極端に言っての話。

ただね、だったら私はなんの目的で小説を書いてるんだろうって。

賞を取るため?書籍化するため?カ◯ヨ◯に認められるため?

そうなれば良いとは思っても、本筋はそうじゃない、私の場合はね。


私は、『自分が書いているような系統の話』が読みたかったの。

そりゃあね、書きたいものも描きたい世界もあるけれど、私が読みたい!って思う作品が少なくなったのが書き始めた最初。」


「そうなんだね。」

「そう、それだけ。

どの道、来年になれば受験で忙しくなりそうだから、書くのはやめるかもしれないしね。

そこまでは決めてないけど。


ただ、初めてカ◯ヨ◯で人気が出ていてもその作品を書くのを辞める人の気持ちが分かった気がするわ。


賞とか書籍化を目指している人とかなら、自分の力を注いでる作品が何も引っ掛からなかったら、もういいかなと思ってしまうわ。

人気が出ていても、それはそれって思っちゃうかもしれない。


簡単に言うと心が折れるのよね、あれって。」


紗奈は顔をグリグリと僕に押し付ける。

話しながら自分でもその感情を整理しているのかもしれない。


「私の最初の動機はそれ。

次は書き続けている理由はもっと単純。

読んでくれている人が居るから、それだけ。

私の場合はね。

それが無くなったら、、、辞めるかもしれないし、違う動機でまた書き出すか、その時にまた考えるわ。」


「そう。」

微笑み、紗奈の頭を撫で続ける。

結局、どうして書くのか、それは書いている人にしか本当のところは分からないのだろう。

ただそれぞれがそれぞれの思いで、カ◯ヨ◯の作品たちが出来上がっていると言うことだけは分かる。


「さ、とりあえず颯太カモーン。」


紗奈は顔を上げ、指でちょいちょいと僕を誘う。


「はいはい。」

僕は笑って紗奈の口に口付けを。

それから。


もきゅもきゅもきゅもきゅ、、、。

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