354日目「ランキングが全てね……」
「ランキングが全てね……」
先程まで僕らのベッドでいつものように寝転がって、スマホでカクヨムを見ていた紗奈は唐突に身体を起こし、ベッドに座った状態で足をぶらぶらさせながらそう言った。
僕は椅子をクルンと回転させて。
「ベッドに座ってるのって久しぶりに見た気がする」
最近はベッドでは、寝転がってる姿しか見ていないな。
僕は机の上を片付けて紗奈の隣に座る。
「なんのランキング?」
紗奈はスマホを僕の方に見せる。
ついでに口も重ねてくる。
もきゅもきゅ。
「全てよ」
「全て?」
「そう、全て。
そして今までの謎も全て解けたわ。
かつてこれを研究した天才が居たわ。
その方……仮に先生と呼ぶけど、先生曰く、ランキング内で星が4桁を超える作品は全て99話までだったそうよ。
100話を超えて4桁になっている作品も99話以内で」
そう言いながら再度、紗奈は軽く口を重ねてくる。
もきゅ。
「え? 全て?」
僕が驚きの返事をすると、紗奈はぺろっと自分の唇を舐めて話を続ける。
「そう、全て。
数万あるカクヨム作品の全て。
そしてそれこそが星の真実。
良い?
面白い話に星がある訳じゃないの。
ランキングに残るから星があるの」
「噂には幾度も聞いたけど、それほど?」
紗奈は意味ありげに頷く。
……頷いて僕の首に両腕を回し、口を重ねて。
もきゅもきゅ。
紗奈はそのまましがみ付いたまま話を続ける。
「……それほどよ。
そして私は図らずもその真実に触れてしまったわ。
……例の長編あるわよね?」
「あー、あの公爵の?
ありがたい事に沢山の人に応援してもらってるね」
とりあえず僕はそんな紗奈の頭を撫でておく。
「そう、応援し続けてくれている人が心の支えよ。
それとは別に、あの話がふとした時にランキングから落ちたの。
その瞬間からPVは1/3以下になったわ。
そしてランキングに入った瞬間にそれが回復したの。
当然、その外れている間に付けてもらった星の数も段違いよ。
……つまりね、作品を読んでもらえる検索件数が文字通り桁違いという事なのよ。
この事からいくつもの真実を再確認したわ。
星が1000を超えたければ、99話以内……もっと上の数に行きたければ20話以内に星を付けたくなるような展開を用意する必要がある、ということよ」
僕はハッと気付かされる。
「そうか!
だからザマァ、寝取り、チート、最強、それらのテンプレとカクヨムの相性が抜群なんだ!」
カクヨムだけではない。
ランキングのあるネット小説が。
カクヨムがその影響が大きいのは、星を付ける画面が最新話か作品トップにしかないからとも聞いたことがある。
紗奈は雰囲気を作りながら頷く。
頷いた後、僕の目をじっと見てくるので、今度は僕から口を重ねる。
もっきゅもっきゅ。
紗奈は嬉しそうにえへへと笑う。
「ええ、今のランキング上位作品を確認してみると良いわ。
数話で星を入れたくなる演出があるはずよ?
……そこまで見てないけど」
見てないんかい。
「そうか……、だからたった数話で1000を超える作品があって、面白いけどそこまでの話かなぁ、と首を捻ることもあったけど全てはそのカラクリにあったのか……」
「そうよ、不正じゃないわ。
システムの問題よ。
だから、とある武蔵野のコンテストの1〜5位がコンテスト規定文字数を超えた長編で埋まってる現状も、なんだかなぁーと思いつつも星が集まってしまうのは、そういうランキングシステムの作りだからよ」
フワッと分かってはいたけど、改めて口にすると……。
僕が黙ると隙ありというが如く、紗奈は今度は唇を触れるように、僕の唇に数度。
「星を稼ぎたければ、数話で人の目を惹く衝撃的な展開や人が好む展開を入れて、意地でもランキングに載ること。
少なくとも現在のカクヨムはこれに限るわ。
だから断言出来る。
星が少なくても面白いものは面白いのよ」
「うーん、面白いというか好みの作品を読みたい僕らとしては、ますますランキングには頼れなくなったという訳か」
僕は腕組みして口を尖らせる。
それを狙ったように紗奈が僕の口に自分の唇を当てる。
それから何食わぬ風で話を続ける。
「私も自分でスコッパーだと思うけど、検索した後も何を基準に作品を試し読みするかと言えば、星の数だったりするわ。
だけど、ランキングというシステムが悪いとは思わないわ。
私が思うところで言えば、長編と短編は分けて、コンテストとか以外では数話でランキングに載るようにしないことがこのシステムの穴を解消する方法になるかもとは思うわ。
このままだと伏線をいくつも張って、後半が面白いという作品は一気に埋もれてしまうもの。
ただカクヨムがネット小説である以上、紙媒体のように全体を通して作品を判断するものじゃないということは、目を逸らしてはいけないのかもしれないわ」
ふーと息を吐き、再度、紗奈はしがみ付いたままで僕を見つめる。
どうやらランキングと星について話せて満足らしい。
「んべ」
そう言いながら、紗奈は綺麗なピンクの舌を僕に見せる。
その舌にスッと僕の舌を当ててから、軽く微笑む。
そうしてから、ゆっくりと紗奈の目を見ながら口を重ね、そのままゆっくりとベッドに紗奈を押し倒す。
もっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅ……。
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