(2023/3/10)今度こそ本当の最終回「本当に最終回なのです!」

「本当に最終回なのです!」


僕らのベッドで僕に引っ付きながら、紗奈はあいも変わらず唐突にそう言った。


「ん」

そう僕は催促して紗奈の口に口を重ねる。

もきゅもきゅ。


口を離したけれど、少し物足りなくてもう一度。

催促すると紗奈も答えるように僕の首の後ろに腕を回してしがみ付く。


もっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅ。


ツィ〜とわずかな間、透明な糸が僕と紗奈の口を繋ぐ。


「……また、もきゅもきゅが増えるね?」

「うん、安定期に入るまで半年ほど、だったよね」


紗奈をそっと抱きしめそのお腹に触れる。

分かったのは山の上の神社へのお参りの後だ。


僕らの子供が出来ているのが分かって、僕は真っ先に紗奈を優しく抱きしめた。

妊娠1ヶ月。


「受精日が、あの日だなぁって分かるのってちょっと気恥ずかしいよねぇ〜」

「あえて口に出すとそうだね」


ちょうど1ヶ月頃僕の誕生日頃。

イチャイチャがイチャイチャし過ぎて、まあ、ドロドロになるぐらいに燃え上がり、なるようになったというか……。


卒業までそこまでお腹は目立たないだろう。

大学に入って数ヶ月は通って、出産と産後は休学か。

最近は例の流行病の影響で皮肉ながら、リモート授業がかなり進んだ。


リモートで授業が受けれる講義を選べば、かなり可能性は広がる。


「そんな中、イチャイチャ幼馴染は最終回を迎えます!」

「結局、子供が出来たところで最終回になったね」


「そうなのよねぇ〜。

本当はさぁ〜、そうなる前にエンディングを迎えるはずだったんだけどね」

「続けばこうなるのは当然だと思うよ」


むしろ、よく我慢した方だと僕なんかは思っている。

出来たことが分かった時は紗奈を優しく抱き締めて褒めた。

どんな状況であれ、僕らの子供たちが授かったのだ。

そのことを僕も……紗奈も後悔することだけはない。


「イチャイチャ幼馴染もねぇ〜、続けたいなぁとか終わりたくないなぁとか思っちゃうのよね。

でもだからこそ、ちゃんと終わるの。

終わりは新しい始まりだもの。


1年が終わるように、学生生活もアオハルの頃もいつか終わるように、それでこそ人は新しい始まりを迎えられるの。


終わらない物語なんて、真っ平ゴメンよ!」


それこそ紗奈のこだわりなのだろう。

僕はただそれを支持するだけだ。


紗奈は僕らのベッドをバフバフ叩き、さらに話を続ける。


「元々このイチャイチャ幼馴染は私が実際にこのネタって現実的にはどうなんだろう〜とか、日常系の小説読みたいなぁ〜とか、色々検証したいなぁ〜で始めたものなのよ」


「それがいつの間にか晒し日記に変わっちゃってまぁ……」

「颯太! それは言うてはならんこと……ってもきゅもきゅを待ち構えないで?

緊張するから。

……もきゅもきゅするけど」


そう言いながら紗奈は僕の口に口を重ねる。

もきゅもきゅ。

ついでにもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅ……。


結局のところ、僕らはもきゅもきゅ好きである。

いや、お互いが好き過ぎるだけとも言えよう。


ツイ〜とまたしても透明な橋が掛かった。

なので僕の服の袖で紗奈の口元を優しく拭ってあげる。


「最後に。

こんなわがままな黒歴史な作品を最後まで応援して頂いた方々。

特にいつもコメントしてくれたあの人とかあの人とかあの人とかあの人とかあの人とか!


本当にありがとうございました_(:3 」∠)_」

紗奈が枕にスマホを安置して深く土下座。

僕も隣で一緒に土下座。


「恐ろしいことに34万PVを記録してしまったわ_:(´ཀ`」 ∠):

これ以上、闇の歴史を続けてはならぬという心の声が……。

それに18で成人した私たちはここからは大人の時間だからね!」


「紗奈、それは上手いことを言ったつもりなのか?」

「言うてはならんことを!

愛しの颯太と言えど、もう許してはおけぬ!

もきゅもきゅの刑よ!」


「……それはご褒美と言わない?」

「……そうとも言うわね。

良いじゃない、頑張った紗奈ちゃんに颯太がご褒美をくれるのよ。

それに、ね。

例え小説であってもお涙頂戴とか寝取りとか浮気とか裏切りとか。

そんなのばっかりだと明日を生きる活力も失っちゃうわ。

人生は続くの。

良いことばかりでは確かに無いけれど、でも意外と人生って捨てたもんじゃないの。

このイチャイチャ幼馴染の1番はそこね」


辛いことも苦しいこともあるだろう。

それでも誰かが幸せであるように。

そうであるように僕らの日々を生きる。


「このイチャイチャ幼馴染は終わるけど、それは私たちのハッピーエンドが終わるわけじゃない。

未来でもきっとこいつらは大丈夫だな、そう思えるような物語を私は愛してるわ」


「そうだね、そうあるように人は努力していくんだ」

僕は目を細め紗奈の頭を優しく撫でる。


「そういうわけで!

颯太、頑張った紗奈ちゃんにご褒美よ!!」

「はいはい」

「はい、は一回!」


そう言いながら、僕らは口を重ねる。

お互いへの想いを大切にして、そうあるように想いを伝えながら。


もきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅくぅ。




おしまい

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