シーズン2夫婦になってからの幼馴染

第1話「颯太、シーズン2よ」

颯太ふうた、シーズン2よ」


横向きで寝転がり、僕の背中をツンツンしていた紗奈さなは唐突にそう言った。


両親の再婚で、一つ屋根の下で暮らす事になった元幼馴染で、去年18歳になると同時に僕の嫁になった。


身内による欲目でも何でもなく、紗奈は美少女……美人だ。

一本に括った背中まである黒く長い髪。細い足。全体的なスタイルも良い。


顔も整っており、綺麗より可愛い感じで、大きく澄んだ瞳も吸い込まれそうになる。


イタズラっ子のようにニシシと笑うこともあり、その顔は僕も好きな顔だった。


今は、というよりいつものことだが、6畳一間に本棚2つに勉強机の僕らの部屋の中。

ベッドの上で大好きなネット小説を読むのが、夫婦になる前からの紗奈の日課だ。


イチャイチャ幼馴染というさらし日記を公開して730日後。


僕らは紗奈の誕生日、2人ともが18歳になった去年の暮れに結婚した。

それとほぼ同時に紗奈の妊娠が判明。


イチャイチャ幼馴染という黒歴史はハッピーエンドのまま幕を閉じて非公開となった……はずだった。


「……また?」

「颯太、私は気付いたの。

黒歴史は再び公開しなければ後悔することはないのよ!」


「なにその、いくら食べてもゼロカロリー並の衝撃宣言」


こうして、紗奈の手によってもきゅもきゅ幼馴染シーズン2が始まった。


「……しれっとタイトルまで変えているよね?

普通なら別作品にならない?」


「私たちの日常の続きだから良いのよ。

それに夫婦になったから、前に副題にしてた『夫婦になるまでの730日』もおかしいから」


そんなもんかなぁ〜?


「あ! なにより黒歴史の最たるもきゅもきゅは封印よ!

イチャイチャはするけどもきゅもきゅは危険よ!

そこから全てが崩れ出したわ……」


「ふ〜ん、そうなんだ」

そう言って僕は紗奈と口を重ねる。


もきゅもきゅ。


口を離して、紗奈は満足げにぷぅーと息を吐く。


「……前言撤回ね。

できるだけしないわ」

「さらさなければ良いだけなんだけど?」


もきゅもきゅしないってのはできないな。

もう夫婦だから遠慮する必要もないし。

……以前から遠慮していなかったけど。


「颯太も!

しないって言った矢先にもきゅもきゅしてくるんだから!」

「紗奈も受け入れてたよね?」


無理矢理奪ったりはしない。

いつでも避けれるように口を近づけて、目を見て確認してから口を重ねている。


むしろ最後は紗奈の方から口を重ねてきた。


「当たり前でしょ!

颯太ともきゅもきゅしたいもの!!」

「はいはい」

「はいは一回!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る