662日目(残り68日)「くわぁー、イイなぁー」

「くわぁー、イイなぁー」


紗奈が僕らのベッドの上でうつ伏せでマンガを読みながら唐突にそう言った。

紗奈……勉強は?


そう思いつつ、僕も今日はこれでおしまい。

机の上を片付けて、紗奈の隣にコロンと寝転ぶと、はい、と紗奈が読んでいたマンガを手渡す。


それを受け取ると隙ありとばかりに口を紗奈に奪われる。


もきゅもきゅもきゅもきゅ。


口を離し、紗奈はぺろっと口の周りを舐めてから、もう一度唇を重ねて、やっぱり再度舌も絡ませる。


もっきゅもっきゅもっきゅもっきゅ。


口を離すと、美味しい〜と紗奈は足をバタバタさせる。

「もきゅもきゅって人によっては無味らしいよ?」

「えっ!?そうなの?

甘くないの?」


「甘味的な甘さはないよね?

そういう意味だと思うけど、1番美味しく思うのってやっぱり感情だと思う」


愛情がないもきゅもきゅはきっと無味なんだと思う。

「あー、そうかも〜。

……というとこれは愛の味ね」


愛には味があったのか。


「快楽を美味と思う人もいるかもね?

いずれにしても感情面でそう思うのであって、食べ物とかの味覚とは違うよね?

ほら、ずっと前だけど飴舐めてキスしたら、甘い味がするのかどうかやったよね?」


「やったわね〜。

飴がむしろ邪魔だったわ。

颯太の口を味わうのが1番美味しいわ」


口を味わうって、初めて聞く気がする。

やけに強い言葉だ。


「……もっと味わいたくなってきた」

紗奈が催促するので、今度は僕から紗奈の口に口を重ねる。


もっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅ……。


口を離すと紗奈は僕が手に持つマンガを指差して。

「あっ、それ!

おもしろいよ。

何というか初々しい恋愛の……とーってもイイ感じの話。

私も書くならこんな話が良いなぁ〜。


やっぱり読みたい話を書かないと意味が無いよね!

……今、書いてる暇がないけど」


「分かってるなら頑張ろうか」

「はーい、とりあえず今日はこれから颯太ともきゅもきゅタイムだから〜」


毎日のことだけど、僕にそれを断ることは出来ない。

僕も紗奈同様、その甘美な味を求めてしまうのだから。


そんなわけでとりあえずとばかりに、僕らは寝転がって寄り添い、口を重ねる。


もきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅ。


今日もまたより一層、もきゅもきゅ過剰だな、なぁんて頭のどこかで思いつつ……。

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