32日目「私、颯太を監禁したいの。」

「私、颯太ふうたを監禁したいの。」


僕のベッドの上で、仰向けに寝転んでスマホで小説を読んでいたはずの紗奈さなは唐突にそう言った。


最初、僕は言われた内容が理解出来なかった。


聞き間違いだろうと紗奈の方を振り向くと、紗奈はいつの間にかスマホを置き、ベッドに座った状態で、こちらを真っ直ぐ見て、もう一度、言った。


「私、颯太を監禁したいほど好きよ。」

「そ、そう?それはありがとう?」


紗奈は引き続き、僕をジーッと見つめる。


「そ、それはどの小説を読んだのかな?」


紗奈はそのまま僕を見ながら答える。

「監禁するのは、犯罪だから健全なカ◯ヨ◯には、あまり多くないわ。


せいぜい、悪役令嬢転生物で改心して、皆に大人気の主人公が後半に悪人に拉致されて監禁されるシーンぐらいよ、多分。」


「そ、そう?えらく具体的だね?」


僕のその反応には答えず、紗奈は立ち上がり、ゆっくり一歩ずつ、紗奈は僕に近づく。


逃げることも出来ずに、僕は紗奈が近づくのを黙って待つ。


「か、監禁されるのかな、、、?」

なんで突然監禁?


紗奈はふざけた様子を一切見せずに、僕をジーッと見たまま。


僕の頬に手で触れる。


「ねえ、颯太?」

「な、なんだい?紗奈。」


真剣な顔の紗奈はとても綺麗だった。


、、、監禁とか、口にしていなければ。


「颯太、、、。」

「、、、なんでしょう?」


ゴクリ。


「私、颯太がすぐに子供を作りたいと言ったら、応えてしまうぐらい、好きよ?」


、、、それは。

冗談で済ます話ではなかった。


「どういう意味?」


紗奈のその目が揺れる。


「私たちは16歳。でも、際限なく互いを求めるなら、いつかそうなるかもしれない。

、、、そうなっても、いいぐらい、颯太が好き。

でもそれは、、、。」


僕は紗奈の手を取り、彼女を抱き寄せる。

「、、、それは2人の世界で全てが完結するなら、だね?」


紗奈はコクリと頷く。


監禁という言葉は強烈だが、例えば、このまま2人で部屋に閉じ籠ってずっと、ずっと居られるならば、そうしたいほどに、と。


でも、世界は、現実はそれではいけない。


僕らが際限なく関係を深め、僅か16歳にして子供を作ってしまったとしよう。


どれほどの苦難を周りに与えるだろう。

何より、子供に。


「例えば、もし、そうなったとしても、僕は全力で紗奈と子供を守るよ。

、、、でも、僕らにはまだ、その力はない。


自活している訳でもない。

大人になり切れている訳でもない。

これからだからね。」


紗奈に微笑む。

紗奈は僕の顔を見ながら、頷く。


僕は紗奈をぎゅっと抱き締める。

「うん、言いたいことは分かった。ちゃんと考えよう。2人で。

勢いとかではなく、ちゃんと考えて、2人で関係を結ぼう。」


これは本当に大事な話だ。

だから、2人でしっかり考えていこうと思う。


紗奈はうんうんと頷く。


「、、、だからね、颯太。」

「うん。」

「私からは襲うけど、出来るだけ我慢してね?」


え?


紗奈は僕の首筋に唇を這わせ、ウチューっと。


ちょっ!


そして、紗奈は両手で僕の顔を挟み、ニッコリと笑い、僕の口を蹂躙した。


僕はされるがままになりながら、混乱する頭で思う。

え!?これ我慢するの!?

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