緊急検証「由々しき事態よ。」
「由々しき事態よ。」
僕らのベッドで何やらカチカチと小説を書いていた紗奈が唐突にそう言った。
「どうした〜?」
僕は椅子を回転させる。
ちなみに今日は紗奈もさっきまで、隣で一緒に勉強していた。
1時間勉強しては、もきゅもきゅ。
2時間勉強したら、もっきゅもっきゅ。
うん、通常運行。
紗奈は飛び起きて、下へ降りて行った、、、と思ったらペットボトルの水を持って戻って来た。
「颯太!颯太!」
ボフボフとベッドの隣に僕を呼ぶ。
はいはい、と隣に座る。
隣に座ると、今回は唇を重ねる。
アムアムという感じに啄むだけ。
だけ?
紗奈はぺろりと自分の唇を舐める。
「検証するわよ。
まずはシチュエーションね。
この水をお酒に見立ててね?
私は今から告白するから、この水を口移しで飲ませてね?」
「待てい!
何で告白前に口移しを求める!?」
「なんかね、勇気が欲しかったみたい。
はい。」
そう言って紗奈は僕に水を渡してくる。
よく分からないけれど、いつものことなので言われた通り水を口に含み紗奈に口移し。
「んっむ。」
もっきゅもっきゅ。
一気に水を口の中に入れると溢れるから、少しずつ。
口の中を湿らすようなイメージ。
ついでにもきゅもきゅ。
「、、、むー、颯太、なんか手慣れてる。」
前にやったことあるしね。
「私からも口移しするから。」
「はいはい。」
ゴキュもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅ、、、。
ちょっと水が溢れたので手で拭き取る。
「んで、どうしたんだ?」
「、、、なんでもきゅもきゅになってるんだろ?」
いや、なんでって言われても。
「ん!」
紗奈はスマホの画面を見せる。
「あー、紗奈が書いたこれ?
読んだよ。
口移ししてたね?」
「そう、『その日、プシッと缶を開け。』
これ、そういうちょっと、なんていうの?
恥ずかしいようなえっちぃような表現はしないつもりだったの。
おかしいわ、、、。
ちょっと大人の2人がお酒を飲みながら語らって、それで少しだけイチャイチャするだけの話だったはずなのに。」
「ガッツリイチャイチャしてるね?」
口移しって相当だと思うよ?
「そうなの。
何故かしら?」
いや何故って、、、。
「幼馴染で両想いの2人が部屋で2人っきりでしょ?
僕らと一緒だよね?」
「そうだった!」
ズガーンと雷に打たれたかのように目を丸くする紗奈。
なんでだよ。
「しまった、、、。
入り口から間違えてしまったわ、、、。
何でもきゅもきゅし出すんだろうと思ったら、そういうことだったのね!
これでももきゅもきゅしないように気を付けてたのに!
もきゅもきゅを避けたと思ったら、いきなり口移しし出したのよ!」
もきゅもきゅと変わらないよね?
モキュとか。
「でも幼馴染じゃ無くても、結局、もきゅもきゅしたんじゃないかなぁ?」
「なんで?」
「なんでって、、、。
紗奈、僕らがこの2人と同じように25才で、部屋に居たらどうなると思う?」
紗奈はスマホを見て首を傾げる。
「もう子供が2人ぐらいは居ると思うけど?」
「そうだろうね。
じゃあさらに仮定の話で、この2人と同じように25才で久々に再会して一緒に暮らし出したら?」
紗奈は再度、首を傾げる。
「子供が出来ると思うわ。」
そうだね、僕らが結婚していない理由って、年齢と稼ぎがないから、『だけ』だからね。
この2人はそれをクリアしてるよね。
「つまり紗奈がイチャイチャを書こうとすると、他のラブコメ作品と違ってジレジレなんてしないし、もきゅもきゅで済んでるだけ『マシ』なんじゃない?」
「ズガガーン!」
紗奈がカミナリにでも打たれたようにそう言う。
「だからなの!?
イチャイチャハッピーエンドな話を読みたいだけなのに、私たちみたいにもきゅもきゅが激しくなってしまうのは!」
「まあ、あとは僕も同じだけど、そういう価値観だからだね。
イチャイチャしながら結婚して子供が出来て幸せになるっていう価値観。」
もきゅもきゅするのも快楽を求めてというより、お互いと繋がり合いたいという想いからだし。
身体の関係も。
どうしても、それを抜きにイチャイチャ出来ないよね。
「例えば紗奈はセフレって考え方分かる?
例えば僕とセフレだったら?」
「書いて貰ってた婚姻届を出すわ。」
うん、すでにセフレが成り立たないよね?
「つまり知っての通り、僕もそうなんだけど、、、。
僕らの価値観では、イチャイチャは快楽を求めてイチャイチャするわけでは無くて。
相手と一緒に居たいという気持ちというか、好きという気持ちがまずあってイチャイチャする訳だから、、、。
何度紗奈が恋愛物を書いたとしても、最後にはもきゅもきゅしちゃうんじゃないか?」
分かりにくいかもしれないけれど、要するに僕ら2人とも、どんなに気持ちが良くとも、好きな人以外とはそういうことはしたくない。
快楽だけで好きでもない人とそういうことをしたとして、その時は気持ち良くても後でとても嫌な気持ちがしてしまう困った性格なのだ。
そういう話も僕らはベッドの中で話し合ったりもしている。
「ズガガガガーン。」
紗奈は気付いて居なかったようだ。
「それと、、、。」
「まだあるの!?」
「もしくはイチャイチャを加減して抱き締め合うだけとか、やっぱり無理だし。」
「どうして?」
「男からしたら、それで我慢出来る訳ないよ?
仮にヘタレだとしても、、、というか、ヘタレってクズ男より人として魅力が無いよね?」
クズ男が何故かモテることはあっても、ヘタレは余程の例外でも無い限りモテるのは聞いたことがない。
それこそ虚構だと思う。
「女の場合、抱き締められるだけで良いことも多いんだけどねぇー。
後まあ、、、ヘタレて答えを出さない人は、間違った答えを出す人よりもダメだとは思うかも。」
こういうところも紗奈と僕の価値観が合うところだったりする。
価値観の不一致。
それが多くのカップルが別れてしまう要因の一つでもある。
「つまり、、、私が書こうとしたような穏やかなイチャイチャラブコメは、、、私では書けないのね、、、。」
ヨヨヨと紗奈が僕にもたれかかるので、頭を撫でて口を重ねておいた。
もきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅ。
「まっ、しょうがないか。
好みの作品を誰か書いてくれるまで待とう。
せっかく書いたけど、お酒の話は少し考え直すことにするわ。
どうせ告白のシーンで致命的に関係持っちゃうし、この2人。」
紗奈はちょっと元気になったようだ。
やはりというか当然というか、この2人の関係はすでに確定のようだ。
「はふ〜、まさか私が書くともきゅもきゅが確定するとは気づいてなかったわ、、、。
そう言えば、私が書く恋愛物ほぼそうだったわ、、、。」
もう良いらしく、紗奈はそう言って僕に紗奈は両腕でしがみついてくる。
僕も紗奈と口を重ねながら優しくベッドに押し倒した。
もきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅ、、、。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます