71日目「私、発情してたの。」

「私、発情してたの。」


僕の枕を抱えながら僕のベッドの上で座りながら、スマホで小説を読んでいた紗奈さなは唐突にそう言った。


今日も今日とて、机に向かっていた僕は思わず、ペンを落とした。

おもむろにくるーりーと紗奈に振り向き一言。

「いきなりなんば言いよっとね!」


何!?何なの!?

発情?発情って言った!?


「良いかい?人間は犬と猫と違いは、万年発情期であり、、、。」


「うんうん、分かったから颯太落ち着いて。

颯太もよ?」


な、なんですとー!?

僕もこの万年発情豚野郎と言いよりますか!?


、、、まあ、否定出来ない。


「、、、それで、発情の元凶ちゃんはどげん言いたかとですばったい?」

「何処の地方の方言?」


何処でもない。

きっと未来の標準語だ。


僕は大きく息を吸い、ゆっくり吐き出す。

「紗奈どうした?また変な作者に唆された?」

「あ、変な作者が誰か気付いたんだ?気付いてないのかな?と思った。

でも、今回は違うよ?」


なんだかとっても重要なことを言われた気がするが、とにかく今回は違うらしい。


、、、いや待て。

今の流して良い内容だったか?


「とにかく発情してたの私たち!」

僕の思考を断ち切るように紗奈が、拳を高く挙げる。


とりあえずは、この発情問題を解決しよう。


「それで?何が発情?」

「イチャイチャモードよ!」

「ああ、なんだ、イチャイチャモードのことか。今月は我慢だよ?」


ふ〜、やれやれと両手を広げる。

イチャイチャモードを誰よりも僕が発動させたいのは秘密だ。


「ちっがーう!!

イチャイチャモードと呼んでたけど違ったのよ!

颯太気づいてたでしょ!」


「な、なんばいいよっとね!?

気づいちょらん!うち、まったく気いづいちょらんきに!」

ジト目で見つめる紗奈。


あら?紗奈ちゃん。

ジト目も可愛いわね?


暫しの無言の攻防後、、、僕は観念して頷いた。


「、、、はい、罪を認めるでやんす。

イチャイチャモードは要するに、発情している状態で、イチャイチャしているのとは比べものにならない興奮状態のことを指すかと思われます。」


だからラブコメでなかなか見ないのだ。

発情してたら、それもう情欲だから。

さりとて、愛を語るならば、その点は決して無視して良いことではなく、いやいや、それは君たちにはまだ早いよ?と言われかねない、本音と建前のアガペーとエロスの何ちゃらかんちゃら。


「ほら、考え込んでないで、颯太こっちに来なさい。」

バシバシといつものように紗奈は自分の隣を叩く。


僕は言われるがままに隣に座る。


「ま、そんな訳で気をつけるように!」

「、、、はい。」


イチャイチャモードの真実を指摘された僕は、そのまま項垂れるのであった。


その日はそのままで過ごし、よく考えたら紗奈からもイチャイチャモード発動させてたよね?とかいう事実は気付くことはなかった。


僕だけのせいじゃなかった。

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