第42話「それでも私は純愛がいい!」

「それでも私は純愛がいい!」


紗奈は寝転がる僕の足にしがみついて、スマホでカクヨムを読みながら唐突にそう言った。


紗奈が純愛派なのは今更だ。

もちろん僕もだが。


「どうした?」

紗奈が唐突なのはいつもだが、あえて純愛を宣言する意味とは?


よいしょと呟きながら、紗奈は僕の顔の位置まで登ってきて……口を重ねる。


もきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅ……。


そのまましばしイチャイチャ。

もきゅもきゅ。


…………。

……。


グデーンと寝そべる紗奈の頭を撫でながら、時々、隙ありと唇を重ねる。

するとそのまま舌も絡めるので、もきゅもきゅ。


……とまあ、さらにしばし。


「ここ2、3日お気に入りの恋愛ものを書いているカクの人の作品を読みまくっていたんだけど、内容は純愛なんだけどテーマがセフレの話があってね」

「ふむふむ」

「どうにもセフレ関係で明るい未来って想像しづらいよねぇと」


僕は頷く。

愛に身体の関係は大事だが、愛がなくとも身体の関係はあったりもする。

ただそこに宿る心を育てられない関係に僕は虚しさを感じるタイプだ。


「そのあたりの矛盾も表現しているから面白かったんだけど、やっぱりところどころ納得できないなぁ〜って関係もあって。

まあ、面白かったわ」

僕は紗奈の頭を撫でる。


まあ、面白かったなら良かった。


「そもそも私が他の人とどうこうはあり得ないから、セフレの選択肢として颯太だけなんだけど。

もし私が颯太とセフレだとどうしたかしらね?」


「それ、前に言ったよね?

婚姻届書かせるって」

「言ったかな?

言ったかも。

婚姻届書かせるし、颯太が他の人にいかないように拘束するかも……かもじゃないかな」


紗奈は……するかもしれない。

だけど、その場合僕も婚姻届にサインするんだから、とっくに紗奈とセフレではなく想いを伝えていると思うんだけど。


僕はそのままの疑問を口にする。

「もはやその場合のセフレとはなんぞや?」


紗奈は少し悩み……答える。


「……既成事実?

いっそ妊娠して責任を取らせるための口実?」

「好きあっているのに?

それは僕も嬉しいだけだけど?」


「あれ?

セフレってなんだっけ?」


うん、成り立たないから考えても仕方ないかと。

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