第53話「ああああああああ、恋愛モノが読みたい!」
「ああああああああ、恋愛モノが読みたい!」
紗奈が唐突にベッドに僕を押し倒してそう言った。
「そうか、そうか」
そう言って頭を撫でてやる。
ここ数日、暴走しているのは一言で言って、それに尽きたのだろう。
要するに紗奈の恋愛モノ欲求が暴走して、ついにはお気に入りの恋愛モノがないからいっそ自分で書いてしまえという暴走である。
「恋愛モノ!
それも純愛が良いの!
寝取りザマァからの美少女にアプローチされてとか、受け身でラッピーヤッピッピーみたいな、そんな展開は不要なの!
要するに2人の激重ぐらいの純愛!
純愛が必要なのよ!!」
そう、いまの紗奈はさながら純愛を求め読み続けるラブモンスターである。
そんな紗奈なのでとりあえず僕は。
「もごっ!?」
紗奈の後頭部を掴んで僕に引き寄せて、ちょっと荒めに口を奪った。
もごもご、もきゅもきゅ。
…………。
…………。
2時間後。
「ふぃ〜、落ち着いたわ。
とりあえずちょっとスコッパーしてみるわ。
ランキング300ぐらいだと私好みの良質なのがあったりするから、とりあえずそれを求めることにするわ」
紗奈は僕の肩を枕にしてスマホでカクヨムを触りだす。
ときどき思い出したように顔をこちらに向けるので、そのタイミングを逃さず唇を重ねる。
「んっ」
そしてまたポチポチとスマホをいじる。
「正直ねぇ、上位ランキングではな◯うの方が良質なのあるのよねぇ。
ここ最近の編集部の人員のせいなのでしょうけど」
異世界テンプレ枠がなろうで検索されづらくなったせいで、カクヨムにテンプレ書きたちが流れて、反対になろう編集部に女性が増えて、恋愛モノがなろうに増えたという噂だ。
「ぶっちゃけて言うけど、ライトノベル系というかカクヨム的ラブコメより、私は恋愛系のラブコメの方がずっと好きだから、カクヨムをスコッパーしていてもそっち系の飢えが満たされない事が多いのよねぇ〜。
そういうのってランキング上位に来づらいから、目立たないし」
それはよくいうカクヨムあるあるだ。
そう一区切りつけたところで、紗奈から僕の唇にキスを落とす。
紗奈はラブモンスター化しているので、キスやもきゅもきゅのクールタイム間隔がさらに狭くなっている。
僕は紗奈の髪をすっと流すように触れる。
お互いの目を合わせてしまったので、そのままどちらともなく口を重ねる。
もきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅ。
「……そういえば」
「そういえば?」
「……もうじきこのもきゅもきゅ幼馴染が50万字に達してしまうわ」
僕はベッドの上でガクッと力尽きる。
ついにこの暗黒黒歴史の晒し日記が長長編小説の仲間入りをしてしまったのだ。
「……長長編小説のラブコメは有名どころの作品ばかりだったわ。
その中にこの黒歴史がついに混ざってしまった。
正直……ヤッチャッタという気分よ……」
紗奈も僕の上でお腹を横にしながらぐったりとする。
「うん、そうだね、ヤッチャッタね?」
「とりあえずもきゅもきゅしておくわ」
なにがとりあえずなのかは、いつも通り気にしても仕方がない。
口実があれば……口実がなくても僕らはお互いのもきゅもきゅを止められないだろう。
そもそも止める気がないのだから。
「んっ」
ちゅっと音をたてながら紗奈は僕に口付けをする。
脳髄を刺激する柔らかで甘美な紗奈の唇の感触が、僕の皮の薄い唇に擦り合わせるように重ねられる。
脳が急速にその回転を鈍らせ、望むがままに僕らは互いの舌を自らの舌で味わう。
その僕らのやり取りを紗奈が疱瘡の果てに晒してここまで来てしまったわけだから、今更なにを止めようか。
……僕が願うのは、この真っ黒黒歴史の僕らの行動が少しでも人目に触れないように。
ただそれだけだ。
もっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅ……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます