第52話「落ち着いたわ」

「落ち着いたわ」


ある程度(?)もきゅもきゅしながら、アレやこれやとイチャイチャした後。

紗奈の頭を撫でていると甘えていた紗奈が唐突にそう言った。


「それはよかった」

つい先程まで、暴走を始めて寝取り浮気純愛という不可思議な話を書こうとしていたのだ。


書くのはいいが、一朝一夕で小説が書き切れるわけもなく、明日になれば時間の無さで紗奈が頭を抱えているのがアリアリと想像できた。


「私、純愛物が読みたいの。

それも深く愛し合ってキュンとくるやつ」

「そうか」


紗奈が暴走する時は大体、そんな気がしてきた。

大方、読んでいるお気に入りの作品を読み切って、次の純愛物を探そうにもテンプレばかりが幅を利かせて、好みの作品が見つからないというやつだろう。


……いつも通りだ。


紗奈が僕の唇にチュッチュと攻勢をかけつつ。

「純愛物が読みたいのー。

無いからいっそ書いてやろうと思ったのー。

超イチャイチャしながら、ちょっと切ないけど、ずっと一緒にいて、それでハッピーエンドのやつ」

「寝取り浮気なんだよね?」


「颯太が私を寝とるような感じかな?」

「僕は誰から寝とるんだ?

僕か?」

「そうね。

私の相手は颯太だけだから、颯太は颯太ね」


それは寝取りというのか?

いいや、言わないだろ。

「そんな寝取り浮気純愛」

「もはやなにがなんだか」


紗奈は、ん〜っと考えつつ天井を見上げて……。

「落ち着いたから今日は寝るわ」

そう言いつつ、紗奈は僕の口を奪いつつ、もきゅもきゅしながら僕を押し倒す。


僕と一緒に寝るという合図のようで。

「でももう少しイチャイチャしてから。

……というか」


小さく音を出さずに紗奈は唇だけで言葉を告げる。

繋がる、という言葉を。


紗奈がそう言うので僕は紗奈の後頭部を優しく撫でながら、舌で返事をするように紗奈の舌に絡ませる。


もきゅもきゅ。

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