2024年5月13日「モキュメンタリーって流行りよねぇ〜」

「モキュメンタリーって流行りよねぇ〜」


ベッドの上で僕の足の間に座り、ときおり僕と触れるようなキスを繰り返しながら紗奈が唐突にそう言った。


「そうなんだ。……えっ?」

もきゅ、メンタリー?


「うん。流行りなのよ。見るとこう〜颯太ともきゅもきゅしたくなるんだけど」

「えっ!? ちょっと待って」

「ん〜?」


紗奈は可愛く顔だけ僕の方に向けるので、我慢できずに唇を重ねて、そのまま舌も絡める。


もきゅもきゅもきゅもきゅ。


口を離すけれど、名残り惜しくて数度唇を重ねると、狙ってもいないのにちゅっちゅと音がしてしまう。


「えへへ〜」

嬉しそうに笑うので、嬉しくなって紗奈の頭を撫でる。


「あー、そうじゃなくて……もきゅメンタリーという言葉が本当に存在してるの?」

「あー、うん。こんなの」


そう言って紗奈はア◯バなどの動画を見せてくれる。


「あ〜、恋愛ドキュメンタリーの……」

そうか、これをモキュメンタリーというのか……。

「ふっ……、私たちは図らずも時代の最先端を行ってたのよ」


確か紗奈がこの黒歴史を描き始めたときは、『もきゅもきゅ』は可愛いという意味のネットスラングだったとか。

数年で恐ろしい言葉ができてしまったものだ。


「面白いし、見るとドキドキきゅんきゅんするんだけど、見終わってその後の話を考えると、ちょっと考えさせられるのよねぇ〜」


「……というと?」


「たとえばこれ、企画で結婚してイチャイチャする話なんだけど、日本では結婚したカップルっていないのよ。するとふと夫婦ってなんだろうって思っちゃって……」


恋愛の先に結婚があるとは限らない。

ドキュメンタリーというか、ドラマとしては人気が出るならそれもあるのだ。

互いがプロであるパターンもあるから、その意味ではドキドキを提供するプロとしていっそ見事と言わざるを得ない。


「あー。これはまあ……、僕らの感性が独特なのかもね」

「どういうこと?」


恋愛バラエティと呼ばれるものだけど、ある意味で恋愛争奪戦だったり、愛よりも恋のドキドキを求めるものだ。


それがやがて恋に発展することもあるけれど、あくまで恋よりの恋愛だ。

そしてそれは多くの人の恋愛観にも通じる。


物語で語られるたった1人の相手というのは理想ではあるけれど、現実にそうはいかない。

僕らは究極的に幸運であったのだ。


そのわずかな可能性でいうなら、運命といっても差し障りのないほどだ。

本当に奇跡的なことなのだ。


「あー、そう考えれば本当にそうなのねぇ〜」


本当に嬉しそうに紗奈は笑って、再度、僕に口付けをしてくる……というか、のしかかられて上から口を重ねてきた。


「むぐっ」


されるがままに舌も重ねながら、そんな紗奈を優しく抱きしめた。


もっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅ……。




……。


……………。


…………それなりに時間が経過したあと。


ベッドの上で2人でゴロンと転がりながら僕はポツリともらす。

「ねえ、紗奈?」

「んー?」


「前にも同じような話……しなかった?」

「……したかも」

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