16日目「ねえ?もうゴールして良いよね?」

「ねえ?もうゴールして良いよね?」


その言葉に僕は直ぐに振り向く。


振り向いた先では、いつものように、僕のベッドの上に転がりながら、足をバタバタさせてスマホで小説を読んでいた紗奈さながキョトンとした顔でこちらを見た。


颯太ふうた。今日は振り向くのが早いね。」

「うん、それについては、僕も話したいことがあったんだ。」


ゴクリ、と紗奈が息を飲むのが分かる。

もしかしたら、僕もそんな感じかもしれない。


それだけ僕が紗奈と話そうとしていることは、のように思えた。


「恋愛やラブコメ小説のゴールって、どこかな?」


ズガーンと落雷を受けたような表情をする紗奈。


そうさながら、何十年前からある伝説の演劇漫画のように。

詳しくは知らないけれど、アレってまだ完結してないよね?


紗奈は口をパクパクさせ、言葉が出ないようだ。


「そう、例えば、例えばだよ?僕と紗奈が、、、。」


ダメだ、止まれ!と言う僕と、言え、言うのだ、いつか必ず通らねばならぬ道だ!と叫ぶ僕がいる。


言うと叫ぶなので、叫ぶ方が勝つ。


「肉体関係を結んだとしよう。」

「ぶふっ!?」


紗奈は顔を真っ赤にして、思わずスマホを取り落とす。


「、、、そこはゴールかい?」

「へ?」


真っ赤な顔は変わらないけれど、必死に考えようとする紗奈。


「では、僕が付き合おうと紗奈に伝えても良い。そして、紗奈が仮にそれを受け入れたとして。」

「受けるけど?」


僕も顔を真っ赤にするが、今夜の話はここで


「それはゴールかい?」

「、、、ゴールじゃないね。」


そうなんだ。

僕らの人生は続くし、僕らのの関係も続く。

良くも悪くも僕と紗奈は、義理であろうとも兄妹なのだ。


僕らが付き合って、別れてもその関係は続く。

その意味で、一般の彼氏彼女にはなれない。


「だから問いたい。


とても危険な問いだ。


物語のゴールは何処だ?と」


お互いに気持ちを言えば、ゴールなのか?

それもまた、一つの物語の終わりだろう。


付き合い出したら、ゴールなのか?

未来がどうであれ、それも一つのゴールだ。


結婚まで至ればゴールか?

では、高校生の、16歳の僕らにはゴールはないのか?


否!断じて否!


だが。


「20未満での結婚の離婚率がもっとも高いのは知ってる?」

紗奈は頷く。


紗奈は直感型だが、馬鹿ではない。

僕と同じように、調べたことがあるのだろう。

スマホは便利だ。


「理由は主に三つ。

精神的に変化し易いこと。浮気をしやすいこと。生活が自立していないこと。」


人の身体や精神の成長は、生物学的なものだ。

余程、強い意志で行動しなければ引きづられるだろう。


のゴールは何処だろうね。」

うーんと紗奈は考える。


僕はウダウダと考え過ぎなのだろう。

もっと刹那に生きたらええんやで!

、、、それも一つの真実だと思う。


けれど、僕は。

「僕は紗奈が好きだよ。手を出すなら真剣に考えたい。」

「え?私もだけど?」

ノータイムで紗奈から返事が返ってくる。


「、、、、、、。」

あれ?じゃあ良いのかな?と僕は思ってしまった。

首を傾げる紗奈。


「、、、でも。」

紗奈は口を開く。


「確かにじゃあ、今日、ゴールなのか?と言われるとそれは違う気がする、、、。

物語としてなら、それはそれとして良いかもしれないけれど。」


紗奈は僕のベッドを撫でながら、僕を見ている。


「そうだね、僕もそう思うよ。」


僕らの物語は両想いという意味でなら、きっと直ぐにゴール出来るだろう。

でも、僕は、おそらく紗奈もゴールしたい先はその先にあると思う。


そこで紗奈は僕のベッドをバフバフ叩く。


「じゃあさ!とりあえず一緒に寝ない?」


、、、なんでそうなる?


「それはカ◯ヨ◯で言うなら、セルフレイティングをつけろと?」


紗奈はん?分かってはりますか?うちものごっつしとりますえ?


「ちーがーうー。

今日はとりあえず、一緒に朝チュンしてみようよ!

せっかくだから、さ。

もっと色々検証してみようよ!

、、、私たちのゴールのためにも。」


違うんかい、と残念に思いつつ、僕は大きくため息を吐き、仕方ないなと微笑んだ。


僕は紗奈と並んで、ベッドに入った。

「えへへ。」

紗奈は可愛く笑った。


そうして僕らは、ゴールについて考えて、0日目、朝チュンを迎えた。

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