165日目「書いたわ。最終回。」

「書いたわ。最終回。」


ちゃぶ台の前でスマホをカチカチしていた紗奈は、ふと手を止めてそう言った。


僕はその時、ベッドの上でスマホでネット小説を読んでいた。

「ついに最終回?」


紗奈はすくっと立ち上がり、手を広げ僕の方に飛び込んできた。

「ついに最終回なのー!!!」


うおっ!?


僕が思わず両手を広げると狙いすましたように、僕の腕の中に飛び込み、頭をぐりぐりと僕の胸に押し付ける。


「最終回!最終回!はふ〜。」

そして、僕にしがみついて、くた〜と力尽きる。

柔らかくてムラムラするけど、少し我慢して話を聞いてあげることにする。

「イチャイチャ幼馴染もついに最終回だね?」

「え?イチャイチャ幼馴染は最終回じゃないわよ?」


あれ?


「昨日そんな話をしなかった?」

「フィナーレについて考えると言っただけよ?真のラブコメを知るために。」

「そんな詐欺みたいな言い回し、、、。」

「それよ!颯太ふうた。」

「どれ?」

「詐欺師の話をついに書き切ったの。」


お〜。

紗奈を腕の中に抱えたまま、パチパチと拍手。

捕まえたから紗奈は離しません。


えへへ〜と嬉しそうに笑う紗奈。

可愛い、、、。

もきゅもきゅしたい気持ちをもう少しだけ我慢。


「公開は2週間ほど後だけどね。

いよいよ、終わるわ。」

「大分、長く書いてたね。

イチャイチャ幼馴染と同じぐらい?」

「あ、そうね。同じぐらい、、、でもないか、あっちの方が1ヶ月ほど早いわね。

こうなんか、あれなのよ、書いたら色々ネタバラシしたくなるわね?」


「僕で良かったら聞くよ?」

「そうね、聞いてもらうわ。

長編を最後まで書き切った時の気分がなんとも言えないわ。

あ〜、終わるんだなぁって。」

「あー、あれかな?小説を読み切った後のその世界の旅立ちみたいな?」

「そう!まさにそれよ!

それをずーっとずーっと深くした感じ。

作品を書くなら、そういう気分を味わえるものを書き続けたいと思うわ。」


そうか、きっとそれはとても素晴らしい気分なんだろうな。


「ところで颯太。書いてる間の息抜きにラブコメとは何かを知るために、な◯うに遠征して来たのだけど。」

遠征というのはどういう、、、あ、な◯うのラブコメ見て来たのか。


「どうだった?」

「正直、納得いかなかったわ。

幼馴染ザマァ、裏切り、浮気、暴走、何よ!イチャイチャして幸せな物語は何故ないの!?

悲しいのは嫌よ!

辛いだけのドキドキなんていらないわ!

それならホラーを見るわ!

怖いから絶対に見ないけど!!」


「そうか、カ◯ヨ◯では減って来たと思ったけど、やはり世はラブコメ修羅場時代のままなんだね。」

「ああ、、、ずっとイチャイチャ、幸せな物語でいいのに、、、。

そういうことだから颯太!

今日のところは私は癒しを所望するわ!

イチャイチャするわよ!」


そんな気合いを入れて宣言しなくても。

まあ、イチャイチャしていいなら、我慢してた分イチャイチャするけど。


紗奈の頬に手を触れると、僕をじっと見ていた紗奈はそっと目を閉じる。

身体は密着したまま。

そうして、僕は紗奈の口に口を触れさせ、紗奈の口を奪う。


もきゅもきゅ。

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