1年と19日目「何だろ?感覚的に書けないって時があるのよ」
「何だろ?感覚的に書けないって時があるのよ」
僕らのベッドでスマホをポチポチしながら小説を書いていた紗奈は唐突にそう言った。
僕は机の上を片付けて振り向いて言った。
「イチャイチャ幼馴染書いてるよね?」
「これは良いのよ。
日記みたいなものだから、別枠。
それにこうやって日々書いていないと書けなくなるものなのよ、特に私は」
「そうなんだ」
そうらしい。
片手でスマホを操作しながら、紗奈は隣をぽんぽんと叩く。
隣に来いということらしい。
とりあえず口ではなく唇をちゅっと重ねる。
「昨日の続きだけど、テンプレを含む所謂な◯◯系の謎が解けたわ」
「終わってなかったんだ、その話」
「もちろんよ。
重要な話だもの。
私は今までな◯◯系はライトノベルと思っていたの。
根本としてそこが間違っていたの」
「違うんだ」
具体的に何が違うのかさっぱりだ。
「中学の頃のことだけど、シャーロックホームズを読んだの覚えているかしら?」
なんとなくで僕が買って紗奈にも貸した。
人によってはそこから全シリーズ集めるのだけど、僕はハマらなかった。
何というか……。
「意訳が物足りない……そうよね?」
僕は頷く。
そうなのだ。
僕なんかは言葉による騙しのテクニックなんかが好きだ。
紗奈も同じタイプなので意見が合う。
「ハリーポッター、流行ったよね?
あれって童話って知ってた?」
僕はもちろんと頷く。
「端的に言うと童話だけあって読みやすいの。
例えばシャーロック・ホームズを初めて読んでビックリしたのが、トリックとか拘ってないの。
何がどうしてそうなったとかは問題ではないの。
雰囲気が大事。
これ、何かと一緒よね?
面倒だから言っちゃうけどテンプレと同じなのよ。
つまり!
テンプレとは世界基準なの!」
「また大きく来たねー」
「考えてもみて?
日本語って海外から見たら難解なのよ。
雲と蜘蛛。
ひらがなだと同じでも意味は違う。
純文学も……テンプレ以外のライトノベルも、その言葉を大事にしてるわ。
全てではないけどテンプレはそこを勢いで乗り越えることが多いわ。
女神からなんでチート貰うのか、気にするのは日本人だけかもね?
分かんないけど」
「……そうか、海外から見ればそのこだわりはどうでも良いどころか、むしろ読む上ではそのニュアンスというやつが上手に変換されないから、むしろ邪魔になってしまう」
「さらに驚くべき話を言えば、とあるスマホの小説が億万部いったそうよ?
それは日本では有り得ないわね?」
「……世界基準で物事を見れば、それは一つの真実にもなる。
むしろ日本内だけで物事を捉えるのは逆に視点が狭いとも言える。
そういうことなのか……カクヨム」
「おそらくネット小説というものが世界に繋がっている。
この基本を忘れてはいけないのよ。
私たちは誤解してはいけない。
純文学、ライトノベル、そしてな◯◯系。
これらはすでに別ジャンルだということを……」
僕らはなんとなく明後日の方向を見つめる。
「難解ではなく、簡潔に分かりやすく、言語に捉われず変換しても楽しさが分かる作品。
それを世界は求めていたのよ……。
それがカクヨムコンのここ最近の大賞の選ばれ方。
既存の“日本での面白さ”を求めている訳ではないのよ……。
るーるーるるー」
紗奈は物悲しい感じの曲を口ずさむ。
「じゃあイチャイチャ幼馴染みたいに簡潔な方が良いってこと?」
「そうかもしれないけど、海外から見て幼馴染のニュアンスってイメージ出来るのかしら?」
それは知らない……。
とりあえず紗奈の頭を撫でると紗奈に押し倒された。
「そんな訳で癒しターイム!」
そう言って紗奈は僕の口に口を重ねてきた。
「むぐっ!?」
もっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅ……。
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