160日目「やっぱりテンプレは良いわね。」

「やっぱりテンプレは良いわね。」


紗奈は僕のベッドの上でコロコロ転がりながら、唐突にそう言った。


「はい?」

僕はペンを持ったまま思わず振り向いた。

紗奈はキョトンとした顔で僕を見る。

「どうしたの?」

「、、、いや、紗奈はテンプレが嫌いだったんじゃないの?」

「いいえ?好きよ。

だって幼馴染物なんてテンプレ物の極みじゃない。」

あ、そっか、と僕は納得しかける。


「いやいや、だってテンプレを書くと思わずツッコミを入れてしまうって、、、。」

「ふっふっふ、颯太ふうた

引っ掛かったわね?」

ふっふっふ、颯太って語呂合わせかなぁと思ってしまった。

「引っ掛かった?」

「そうよ?思い出してみなさい!私、一度でもテンプレを嫌いだと言ったかしら?」


僕はここ数日のテンプレ話を思い出す。

あれ?テンプレが面白くないと言ってたのは、嫌いとは違うのかな?


紗奈はビシッとスマホを僕に見せる。

「颯太!良く見てみなさい!私が書いた小説を!

ある共通点があるわ!」

とりあえず、ペンを置いて紗奈の隣に座る。


「、、、テンプレというよりお約束みたいにもきゅもきゅが発生して、なし崩しになっちゃうから少しだけ離れるね?」


紗奈が間1人分離れるので、詰め寄って逃さないように腰を抱き寄せてスマホを確認する。

「つ〜か〜まった〜。」

僕はガックリと肩を落とす紗奈をそのままに、紗奈が書いた小説を確認する。


「幼馴染物が多いね。」

「幼馴染物好きだもの。」

よく確認してみる。


この間から紗奈がテンプレ検証のため書いてる小説も。

「あ。」

ちょっとした違和感。


幼馴染に絞って物事を考えてみれば、紗奈がテンプレの何が不満だったのか気付ける。


「ふっふっふ、。」

「そういうことか。

これ、、、幼馴染ザマァのテンプレだ。」


「そうよ!

私は認めない!

幼馴染は幸せになるべきなの!

それが恋の成就であれ!とまでは言わないわ!

でもね!不幸にしたらダメよ!

認めないわ!

もし、もしも幼馴染ザマァをするというならば!

それなりの根拠とストーリーを示しなさい!

そう言いたかったのよ!」


あー。

とても紗奈らしい。

そういえば、最初から幼馴染ザマァが気に食わないとそう言ってたなぁ、、、。

僕は今更ながらに納得した。


それはそれとして。

「あら?颯太。私だんだん引き寄せられている気がするけど、何故かしら?

嫌じゃないわよ?嫌じゃないけど、もしかしていつも通り?」

「うん。」


そう言って、そのまま紗奈と口を重ねる。

「あぐっ。」


もきゅもきゅもきゅもきゅ、、、。

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