101日目「私たちイチャイチャし過ぎだと思うの!」

「私たちイチャイチャし過ぎだと思うの!」


僕のベッドの上で、寝転がって僕の枕をハムハムしながら、スマホで小説を読んでいた紗奈さなは唐突にそう言った。


とりあえず、僕はペンを置き、勉強道具を片付けて紗奈の隣に座る。


紗奈の唇にそっと触れる。

「荒れてる?」

「ううん、リップ付けてるから大丈夫。」


念のため、ベッドの枕側にある棚からリップクリームを取り、紗奈に塗る。

紗奈は唇を少しこちらに向け、目を閉じる。


紗奈の唇にリップクリームをつけて、それを僕の唇を重ね、動かし、優しく伸ばす。

一通り口の端まで満遍なく伸ばしたら、唇で紗奈の口を開け舌を伸ばす。

紗奈も応えるように舌を合わす。


「んっ。」

もきゅもきゅ。


柔らかく吐息を吐き出しながら、紗奈の顔を見る。

可愛いな、と改めて思う。


「嫌?」

「嫌じゃない。」

紗奈は即座に答える。


僕らはまた口を合わせる。

もきゅもきゅ。


「でも、ネット小説の普通のラブコメに比べて、私たち随分、過激だと思うの!

毎日、ディ、もきゅもきゅしてるし!」


比較対象がラブコメというのもアレだが。

ふむ、と僕は腕を組み頷く。


ここはしっかり話をしておくべきだと思った。

ちゅっ、と。

今度は紗奈の唇に優しく触れてから、僕は立ち上がり、椅子に座りノートを広げる。


それからこいこいと手招きしてから、紗奈に椅子を用意する。

いつでも一緒に勉強出来る様に、紗奈用の椅子はいつも用意されている。

紗奈は真っ直ぐ僕のベッドに飛び込むから、あまり活用はしないが。


紗奈が隣に座ると、僕はノートに書き込みながら説明を始める。


「いいかい?

僕らがもきゅもきゅを減らすためには、いくつか方法がある。」

「あれ?方法があるの?」

紗奈は首を傾げるので、僕は頷く。


「まずは部屋で2人っきりになるのを避ける。


僕らは幸いにも、義理の兄妹として、同じ家に暮らし、更に両親公認のカップルとして、常に一緒に居られる。


だけど、一般のカップル。

ネット小説のラブコメでも多くそうだけど、部屋に2人っきりになれる機会は実はそれほど多くはない。」

「それはヤダ。」


僕は頷く。

「感情的にも嫌だし、何より実はこれには大きなリスクがある。

どんなラブラブカップル、そう、僕らのような幼馴染でさえ、人が分かり合うのは難しいということ。


僕らが毎日毎日毎日、イチャイチャしていられるのも、沢山話をして、お互いが分かり合う努力をしているからでもある。


まあ、一緒に居て息が詰まったりしないほど相性が良いのもあるけどね。」

「とりあえず、離れるのは却下ね。」


僕は頷く。


「次は、、、もきゅもきゅをする必要がないほど、、、ずっとまあ、飽きるまで、身体で『そういうこと』をすること。」

「、、、子供、出来ちゃうね。」

僕のノートを見ながら、紗奈は何とも言えない表情。

僕は困ったような顔。


「そうだね。

僕は紗奈から、今しか出来ない高校生活を奪いたくはない。

紗奈がもし子供が出来ても、覚悟をしてくれているのは嬉しいし、僕も紗奈との子供が出来たら嬉しい。

それでも、やっぱりちゃんと時間をかけて一緒に大人になりたい。

僕はそう思う。」


「うん。」


紗奈は頷く。


そして僕はこう続ける。

「そうならないために、僕らはもきゅもきゅで抑えている。

これは僕らが許せる最低限度だと思う。

確かに、僕らの関係はネット小説のラブコメの彼ら彼女らよりも過激なイチャイチャが多いと思う。


、、、でもね。

それは当然なんだ。

僕らは彼ら彼女らと同じステージに居ない。」

「どういうこと?」

紗奈は僕を見ながら首を傾げる。

僕は笑って紗奈に伝える。


「だって、僕らはすでに愛し合ってるからね。

好きかどうか、好きかも、好き、、、それどころか、大好きより先に居る。

同じイチャイチャでは、居られないよ?」


紗奈は口をぽかんと開ける。


「あー、そうかぁー、そういえば、そうだよね、、、。

じゃあ、、、。」

仕方ないね。


今度こそ紗奈は、仕方ない、と笑った。

僕はそれに優しく微笑み、紗奈の頬にキスをする。


「紗奈、愛してるよ。」

「私も、颯太を愛してる。」

僕らは口を重ねる。

もっきゅもっきゅ。


そして、僕らはいつかと同じように、仕方ないね、と笑い合った。

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