642日目(残り88日)「そうか、私ただ単純に悔しいんだ」

「そうか、私ただ単純に悔しいんだ」


紗奈はベッドの上でジタバタしたと思ったら、突然、脱力してくたっと力尽きた。


僕が机の上を片付けて立ち上がろうとすると紗奈が警告を発する。


「颯太!

気を付けて!

今日の紗奈ちゃんは危険よ!

近付くと襲われるわ」


「それは良いね」

僕は紗奈の隣に座り、脱力した紗奈の頭を撫でる。


「颯太がぁー、襲われると言ってるのに〜、無視する〜」

「無視してないよ?

襲われるのも悪くないから来ただけ」


「あっ、これ知ってる。

私が襲わなければ、颯太が狼になって襲われるやつだ」


僕は紗奈の頭を撫でながら、うんうんと頷く。

そこで紗奈は誤魔化すようにスマホを見せてくる。


画面はカクヨム。

「あ〜、ドラゴンノベルスの結果出たんだ」

「去年を見て分かってたけど、やっぱりテンプレ重視ね。

カクヨムコンもそうなんだけど、カクヨムは基本的にな◯うよりもテンプレ重視かもね。

最近、な◯う見ないから適当だけど」


紗奈はゴロゴロと口で言いながら僕の腰にしがみ付く。

「そんなわけで期待もしてなかったどころか、ちょっと忘れてたんだけど、改めて私の書く話とかテンプレじゃない話はお呼びじゃないんだなぁと思うと虚しくなるわ」


「まあ、お呼びじゃないってことはないだろうけど、テンプレ重視は今更じゃないか?

紗奈、去年も同じこと言ってたし」


紗奈は日記を見直すようにイチャイチャ幼馴染を見返す。


「……どこかで書いた覚えがあるけど思い出せないわ」

「まあ、2年間の記録だからねぇ〜」


「結局、納得いくか、いかないは別にして、自分がどうしたいのかははっきりしてるから、悩んでも仕方ないのよ。

どちらにせよ、私はテンプレは書かないし求めてもないから、本当にただ単純に悔しいだけなのよ」


「何事でも本気でやってると負けると悔しいもんね」

「そうなのよ。

……話してたら颯太を襲いたくなってきたわ」

「ウェルカム」


僕は紗奈を引っ張りあげて抱き締める。

紗奈はされるがまま。


「あまりに悔しいから、ノベル◯アでそっち方面の新作でも書いてやろうかと思ったわ」

「なかなかの暴走ぶりだね」


「でも後で絶対後悔するからやめたわ。

ついでに言うなら、イチャイチャ幼馴染も私の黒歴史そのものだから、完結したら非公開にするわ」


「正直、それが良いと僕も思ったりしている」


そこで紗奈は顔をあげて、真っ直ぐに僕を見る。

「そんなわけで検証すべきところはやり残したことがないように、思いっきりやるわよ!

えっちぃの以外で!」


たしかにえっちぃのはダメだ。

多少、紗奈が晒し過ぎて舌を絡ませたりしてることも書いているけど、それでもダメだ!


「……でも今はとりあえずもきゅもきゅして心を癒すわ」

紗奈がそう言ったので僕は迷わず、紗奈の口を奪う。


「んっ!?」

もっきゅもっきゅ。

離れた舌同士が透明の糸で繋がっている。


「……私から襲うつもりだったんだけど?」

「うんうん」

狼化してしまった僕は笑顔で頷きながら、紗奈の口をもう一度奪い……そのまま押し倒すのであった。


もきゅもきゅもきゅもきゅ……。


紗奈は押し倒されながらも僕に尋ねる。

「……ね、ねぇ颯太。

今日のこと書いたら、過激過ぎるかな?

流石にマズイのは今まで書いて、ないつもり、なんだけど」

もきゅもきゅ。


「うん、ダメだと思うよ?」

もきゅもきゅ。


「そ、そうよね。

何気に昨日の話も、過激過ぎると、思って……、反省、してたんだけど」

もきゅもきゅ。

「……流石にそれは反省の色がなさ過ぎるよ」

もきゅもきゅ。

「そ、そうか、な……、?」

もっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅ……。

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