11日目「私、勇者に復讐するわ。」

「私、勇者に復讐するわ。」


僕のベッドの上で、寝転がりながら、布団に入りスマホで小説を読んでいた紗奈さなは唐突にそう言った。


「ここ数日、僕のベッドで寝るよね?

クセになってない?」


僕はとりあえず今日のノルマは終わったので、くるりんぱと椅子を回転させて紗奈の方を向く。


ベッドの上で、更に布団にくるまり紗奈巻きが完成している。


「とりあえず、私、勇者に復讐するわ。」

「ついに、ラブコメ以外に入ったね?」

「え?元々、ラブコメ以外も読むって言ってたよ〜?」


言ってたね。

面白いSFが有るとも。


僕は少し考える。

「大前提として、勇者が人格者ではない事が多いよね。

昔の小説とかなら、勇者は良い人だったけど、復讐物はなんでコイツが勇者と呼ばれるんだ?という奴が多いね。

勇者=人格者という図式自体が現実では成り立つとは限らないと思うから、そちらの方が実はリアルに近いのかな?」


紗奈も布団にくるまったまま、相槌を打つ。

「そうよね、その後は大体、勇者より強くなるよね。後、最初に幼馴染が寝取られてるから、なんか嫌。」


なんか嫌って、身も蓋もないね。


「まあ、幼馴染というだけで彼女というわけではないからって、これ、結構前にも同じ話したよね?」


紗奈は巻きの状態でゴロゴロ〜。


「復讐物のパターン化したのは、辛くなるから颯太、とりあえず私を寝取って〜。」


「僕、勇者になったんだ?これも前に話したよね?原点回帰?」


総集編?

それとその巻いた状態で寝る気?


すご〜く今更かも知れないけれど、ピンクのパジャマの紗奈をお姫様抱っこするのって、すっごくドキドキして辛いんだけど?


「原点回帰〜。今更なんだけど、幼馴染と言えど颯太のベッドで、パジャマでゴロゴロしてる私って、ちょっと色々危なくね?とか思って。」

「分かってるなら、僕のベッドで僕の布団にくるまるの止めようか。」


巻きの状態のまま、紗奈はう〜んと唸る。


「そうすると、私の居場所、颯太の膝の上だけになるし大変でしょ?」


膝の上だけになるのか?


「勇者に復讐するのはもういいの?」

「うん、次のパターンを待つことにするわ。人はそうやって新しい物を生み出し、成長していくの。」

「そうだね?そろそろ、紗奈も僕のベッドでゴロゴロパターン止めようか。」


エッと、まだ布団にくるまったままの紗奈は、暑くなってきたのか顔を真っ赤にする。


「、、、次のステージは、まだちょっと早いんじゃないかな?

、、、颯太が良いなら、私は良いけど。」


暑いのか、赤くなってるのかどっちだ!?

そして何が良くて、何が良いんだ!

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