669日目(残り61日)「書きたいけれど書いている暇がないのよ」

「書きたいけれど書いている暇がないのよ」


紗奈は僕をベッドに引きづり込み、僕にしがみ付きゴロゴロとした後、唐突にそう言った。


「それは仕方ないよね?

元々、書くには時間も気力もかなりいるわけだし……むぎゅっ」

紗奈はおだまりというように、僕の口を奪い舌を絡ませる。


もきゅもきゅ。


口を離し、名残り惜しむように唇をちゅっと数度重ねてからポツリと。


「……今更だけど、もきゅもきゅってちょっとやらしいよね?」

「……ほんとにどうしようもないほど今更だよね」

話しながら数度触れるようなキスを繰り返してもう一度。

もきゅもきゅ。


「それはともかく時間がないの」

「うん、それは聞いた」

「書かないと感覚は抜けていって書けなくなるの」

うーんと僕は唸るように。


「難しいもんだよね……。

プロではないから慌てて書く必要はないけど、書かないとそのまま書けなくなる。

多くの英傑(作者)たちが去っていく大きな理由の一つだよね」


「あと心が折れるのとね。

最近さぁ〜、だんだんカクヨムの作品が読めなくなっていってるのよ。

元々ランキング内のテンプレ系は読めなくなってたけど、それが加速している感覚がするのよ。

そろそろヨムかカクかの選択の刻が近いんだと思う。

あとお気に入りの作品は別にして、魂が震える作品が見つからない。

トップクラスに面白いと思ってた作者が筆を折っちゃってから、私もそうなのかも。


そう思わせる要因となったテンプレとか流行とか世知辛いわ」


「紗奈はテンプレ書けないもんな」

「そうなのよ、何度も挑戦しようと思うんだけど、その度に私の心の声が叫ぶのよ。

他の人が大量に書いてる同じような内容なら、自分で書く必要なくない?って。

元々、私は自分の好きな話を読みたくて書いてるわけだし?」


「……だからってイチャイチャ幼馴染のもきゅもきゅは違くない?」


紗奈は逃さぬとばかりに、僕にしがみ付くように首の後ろに腕を回す。

「甘いわね、颯太。

私もイチャイチャ幼馴染をここまで晒す気なんてカケラも無かったわ。

これぞ、俗に言う作品が求めているというやつよ。

私は颯太とイチャイチャしたいの」


ドヤァと紗奈が得意げに笑うので、僕はそのまま紗奈の口を奪い押し倒す。


「ちょっ!?

ふぅ……あっぐっ」


もっきゅもっきゅもっきゅもっきゅ。


ここまで言ってしまうのもなんだけど、このあと美味しく頂きました。


「ふ、颯太が晒し過ぎ……んっぐ」

もきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅ……。


そういう日もある。

人はそれを黒歴史と呼ぶ。

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