もういいや351日目「ついにあのシーンを書いたわ」
「ついにあのシーンを書いたわ」
紗奈は僕らのベッドの上で、ぐったりとうつ伏せて打ち上げられた魚のように伸びている。
美味しそうに思ってしまった。
なので迷わず紗奈の隣にいき、紗奈をクルンと上向きのさせる。
「あれ?」
紗奈が目をパチクリさせているところを上から口を重ねる。
もきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅ。
ついでにもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅ、ちゅっと。
ぺろりと口元を舐める。
何が起こったのか呆然としている紗奈の口元が濡れているので手で優しく拭く。
んで、もう一度。
もきゅっと。
キリがないのでこんなところで。
「それで、どのシーン?」
「え〜っと、これ」
紗奈はスマホを見せる。
その際に顔が近付くので、また唇を重ねる。
そこからもきゅもきゅ。
「キ〜リが〜な〜い〜」
紗奈が訴えるので、頭を撫でつつごめんごめんと謝る。
見やすいように横に転がると警戒なく、引っ付いてきてスマホの画面を見せる。
顔が近いので、紗奈の唇をまた意識してしまう。
どうしようかなぁ〜と思いつつ、少しだけ我慢して画面を見る。
「ああ、まだ公開してないんだね?」
「そうよ、後10話ほど先の3章のラストシーン。
書くのが辛かったわ。
ここで私が力尽きたらバッドエンドよ、困ったものね」
「うん、まあ、でも無理しないようにね」
無理して身体を壊すことになったら、元も子もない。
「そうね、でも辛いシーンというのは難しいわ。
矛盾があったら雰囲気壊れるし、あれ? その考えおかしくない? とかいうパターンで作品そのものが一気に冷めてしまう場合があるわ。
盛り上がるところだけど、とっても難しいわ」
なるほど、燃える展開とかで、あれ? こいつ言ってることおかしいぞ? とか時々見かけるなぁ、確かに。
「もうね、疲れたから次の章は『ポンコツの夜明け』とかいう章タイトルにしてしまおうかと……」
「まあ、雰囲気が壊れないならアリだけど、シリアスは死ぬよね?」
「そうね、恐ろしいわね、ポンコツ」
いや、その場合、恐ろしいのはポンコツじゃなくて。
そこでウガーと言いながら、紗奈が僕の身体に擦り寄る、というか上に乗ってきた。
「そんな訳で疲れたから颯太エネルギーを吸収するのよ!」
そのまあ、なんだね。
柔らかくて温かい紗奈が上にもぞもぞ乗るもんだから。
「……えーっと、紗奈?
ちょっと僕は今、狼状態だから」
そっと紗奈を逃さぬように優しく拘束する。
「あれ?
危ない?」
「うん、まあ……」
「あーれー。
でも颯太エネルギー欠乏症の紗奈ちゃんとしては、逃げられないのです」
そう言って紗奈はもぞもぞしながら、僕の顔を覗き込んでくる。
まあ、うん、良いならいいんだ。
そうして僕らは口を重ねる。
もきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅ……。
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