170日目「今日は色々無理、、、いえ、違うわ!」
「今日は色々無理、、、いえ、違うわ!」
ちゃぶ台の前に座って、僕の足にしがみ付いていた紗奈は唐突にそう言った。
立ち上がり、スタスタと僕のベッドに登り、その上で正座してから、ベッドの上をダンダンと叩く。
「
なんだか叱られるみたいな言い方だなぁ、と思いつつ僕は机の上を片付けて、ベッドの上に登り紗奈に向かい合うように正座した。
「私、気付きかけているわ。」
「何を?」
「ラブコメのなんたるかをよ。」
僕は首を傾げる。
「何なの?」
紗奈は意味あり気にふっふっふと笑う。
気付きかけているということは、気付いてはないんだ。
「まず改めて言うわ。私、書籍では、、、紙の小説ではラブコメを読んだこと、なかったわ、、、。」
「な、なんだってー、、、僕もないなぁ。」
うむ、と紗奈は腕組みして頷く。
「そんな紗奈を見て、僕はそのまま押し倒したいなぁ〜と思ってしまう。」
「突然、何を言い出すのよ颯太。」
紗奈は恥ずかしかったらしくモジモジする。
「と、とにかく!今、発売されているラブコメ小説のタイトルを見ても、思わず目を逸らしてしまうものが多いわ!
読みたくないとかではなく、恥ずかしくなってね?」
それは僕の方が強く感じるかもしれない。
そんな訳で僕も紗奈もネット小説でその心の隙間を埋めるように、ラブコメを読むのかもしれない。
「実際、書籍化されるものもそんなタイトルのものが多いわ。
最強物もそうだけど、私はこれにある仮説を立てたわ。」
「ほほう、どんな?」
紗奈はピースをする。
僕もピースを返す。
「違うわよ。2つの仮説よ。
1つはある特定のタイトルや内容、、、つまりテンプレがある程度売れることが実証されている。
ここに面白いかどうかは関係ないわ。
次にアニメや漫画になった時、その手のテンプレの方が軌道に乗りやすいということよ。」
今度は僕が腕組みして唸る。
「、、、なるほど、僕もランキングやテンプレネタにモヤモヤしていたけど、背景にそのようなものが存在するとすれば、ランキングや書籍化がそうなるのも分からなくはない。」
「、、、そうね。
もちろん、中にはその枠に囚われない例外もある。
その例外こそが新しい扉を開く存在、、、になる可能性がある。
私はそう思うわ。」
、、、なるほど。
でも書籍化を目指す人にしてみれば、ここで2択を迫られる訳か。
ある程度かそれとも開拓者か。
僕としては、開拓者の作品を読みたいけど、ある程度が決して悪いとも思わない。
それもまた人の、、、ライトノベルの在り方かもしれないのだから。
「それでね、漫画のラブコメで男向けだとハーレム物多いでしょ?
私はハーレム物ダメだから目を逸らすけど、アレも同じ現象なのかなって。」
「あ〜、僕も男だけど、ハーレム物は好きじゃないなぁ。
あの男女の関係って未来が見えない気がして。
まあ、ただの主観なんだけど。」
紗奈は両手を広げ肩をすくめる。
「そうね。結局、何が面白いかどうかは人それぞれだしね。
私は純愛幼馴染一択だけど。
さて!颯太!今日のお話終わり!
イチャイチャしよう!」
そう言って紗奈はおいで!と目をキラキラさせながら、両手を僕に伸ばす。
突然だなぁと、僕は軽く微笑み、紗奈に両手を伸ばし彼女を優しく抱き締める。
もちろん、いつものようにそのまま口を重ねる。
もきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅ、、、。
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