51日目私には好きな人が居る

私には好きな人が居る。


幼い頃から一緒で、最近家族になった。

義兄の颯太ふうただ。

夫婦だったら良かったのに、と思わなくもない。


例えば10年後、何かの間違いで私たちが別れていたとしよう。

私は変わらず彼が好きで、どうやったら手に入れられるのか苦しんでいる事だろう。


あるいは、そうなったとしても、もう一度、何かの奇跡で彼の側に居られることになっただけで、過去の苦しみなんか忘れて、また私は幸せになるのだろう。


すでにこの感情は、恋とは呼べないのだろう。

では、愛か?と言われると、実はどこか違うのかもしれない。


私には、それに1番近い言葉を見つけている。

妄執だ。


彼の側に居られれば、全てどうでも良いし、反対に居られないならば、それこそ何もかもどうでもいい。


もしも、想像するだけで嫌なことだが、彼が居なくなるようなことがあれば。

私は存在していることに意味を見出すことは、この人生では出来ないだろう。


つまるところ、私にとって、彼の居ない人生はあり得ないし、彼以外のもの、あえて言うなら彼以外の男とやらは、それこそどうでもいい。


もちろん、家族とか友達とかが、どうでも良いと言う意味ではないが。


そこのところを颯太には、伝えているつもりだが、イマイチ伝わっていない気がする。


理解しろ、という方が無理なのかもしれない。

こう言ってはなんだが、私の感情は重過ぎる。


たまに颯太にも言ってしまうが、今すぐ彼との子供が欲しいのが、私の本音だ。


なんとか、長い目で見て安定して稼げる方法があれば、いいのにと考えたりもする。


そんな風にネット小説を見てしまうこともあるが、そんな文才は流石に持ち合わせていない。

才能というものに嫉妬してしまう。


「紗奈。」


彼が呼ぶ、その言葉で私の世界は色が付く。


学校の授業が、いつの間にか終わっていた。

寒い冬だけど、例年に比べ暖冬らしい。


愛しい彼も少し寒そうだ。

いつもの部屋なら、布団に引きづり込んでやるのに。


「颯太〜、どうしたの?」

「今日、委員会だから先に帰っておいて。」


ガーン∑(゚Д゚)と衝撃を受ける。


なんと卑劣な委員会が、私たちの中を裂こうというのね!

そこで隣に座った委員会のイケてるぽっと出の女子が、颯太にアプローチをかける!


敗れ去る幼馴染!


「ああ、、、颯太に捨てられる。」

「はいはい、捨てないから。ちゃんと家で待っててね。」

ポンっと私の頭を叩く。


「颯太がぶった〜。」

「ぶってないから。」


颯太が教室を出て行く。

あー、置いてかれたー。


「相変わらず牧田君が居なくなると、垂れ下がった尻尾が見えるみたいね?」

「おお!我が盟友、芽依!居たのか!」


佐竹芽依さたけめい、中学からの友達だ。

スッキリとした感じ(?)の眼鏡美人だ。

眼鏡良いよね!

私は視力が良いから、不要だけど。

私と颯太の関係も知っている、というか話した。


「随分な言いようね。珍しく1人なら買い食いでもどうかな?」

「流石は盟友芽依だ。

今日はクレープが私を呼んでいるのだ。

行こう、私たちの未来のために。」

「太った未来でないことを祈るわ。」


食べ過ぎると、一気に太るからなぁ。

食べた分は運動しておかないといけない。

それでも甘い物は食べたい。


「食べてはいけないから、食べたくなるというやつね。

多くの幼馴染たちが、その誘惑に負け浮気に走り、ざまぁされる。

全て若気の至だけど、その代償はあまりに大きいわよね。」


「うん、まあ、幼馴染が普通のカップルと言い換えるなら、男女問わず、その例はマトを得ているかもね?」


「でしょ?でしょ?

あ、私は颯太と別れる気がないから、その気配を万が一、億が一、感じたら止めてね?

止めないとヤバいことになる自覚あるから。」


「相変わらずね、、、。

はいはい、分かってるわよ。ご馳走様、ウップ、今日は甘い物無理かなぁ?

、、、冗談よ、泣きそうな顔しない。

行きましょう。」

「はーい。」

そうして、私たちは教室を後にした。

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