56日目「人はどうして別れてしまうのかな。」
「人はどうして別れてしまうのかな。」
僕のベッドの上で、僕の足の間で僕を背もたれにしながら、僕のあげたタヌキのポン太くんぬいぐるみ(僕に似ているらしい)を抱えて、スマホで小説を読んでいた紗奈は唐突にそう言った。
ちなみに僕はそれどころじゃない。
僕の中の暴れ狂う龍と戦い、心の中だけでのたうち回っていた。
もう柔らかいし、いい匂いだし、もうそろそろ色々限界である。
この体勢になって2分ほど、3分待つ必要はない。2分が美味しいんだよ?というやつですね、そうですね。
「颯太〜聞いてる〜?」
紗奈が下から見上げる綺麗な唇をパクッといきたいですね、パクッと。
「どうしてかな?うん、どうしてだろう?」
もう別れる、うんぬん、こんな状況になれば、そんなことは考えられないと思うから。
だから、今の僕に別れのことを考えるのは無理だ。
「私は最近、ようやく気付いたの。それは幼馴染では無いからよ!」
うん、じゃあ、大半の人が別れるしかなくなってしまうね。
ちょっと暴論過ぎるから、とりあえず口を塞いでおこう。
・・・・・・。
「、、、と、とりあえず、幼馴染じゃないからだと。」
まだ言うか。
・・・・・・。
「幼馴染が、、、もがっ。」
・・・・・・・。
「、、、幼馴染、関係ないです。」
よしよし。
ぐったりする紗奈の頭を撫でておく。
「颯太がぁ〜♪凶暴だぁ〜♪」
失敬な。
暴力的な事は一切行っていない。
「そうだね、確かに人は分かり合うのに、どうしても時間が掛かるし、その人が大事にしている価値観そのものが合うかどうかも、相手を知って初めて分かる事だ。
紗奈が言う、幼馴染ではないという言葉もあながち間違いじゃない。」
「あ、合ってるじゃない!」
紗奈は僕を見て抗議の声をあげるので、また口を塞いでおいた。
・・・・・・。
・・・・・・。
さっきより長め。
ぐったりする紗奈の頭を撫でる。
「、、、颯太が今、危ない状態なのは分かったわ。」
うん、そうだね!
「だから、相手を知るためにとりあえず付き合うということも、間違いではないのだと思う。
そうして、付き合っているうちに別の誰かを好きになってしまうことも。
、、、ただ、それでも、とりあえずではなく、この人のことを知ってみたいで付き合ってもらいたいとは思う。
ラブコメとかは、その辺りがごっちゃになってしまいやすい気はする。
あくまで僕の勝手な印象だけど。」
紗奈はぐったりと僕の足に寝そべりながら、同意する。
「、、、ああ、そっか。だから浮気とかも発生するのね。とりあえずだから、身体の相性もとりあえずで考えるから。
、、、うん、そっか。
幼馴染パターンでそれが多いのも、結局、幼馴染のその相手が、、、言ってしまえば、運命の相手かどうか分かっていないから、なのかもね。
、、、颯太はとりあえずで私と一緒に居る?」
今度は口を塞ぐためではなく、気持ちを伝えるために紗奈の口に優しく口を重ねる。
「僕はとりあえずでキス出来るほど器用ではないよ。」
「、、、うん、私も。」
そう言って、紗奈はお返ししてくれた。
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