192日目「人は沢山の事を同時にやれるようには出来ていない。」

「人は沢山の事を同時にやれるようには出来ていない。」


いつものように僕らのベッドにうつ伏せに寝転がりながら、足をバタバタさせてスマホで小説を書いていた紗奈は唐突にそう言った。


僕もまた、いつものように椅子を回転させて振り向く。

「そうだね。」


そう言ってから、机の上を片付けていつもの通りベッドの上の紗奈の隣に座る。


「今度はどうした?」

「う〜ん、新作と連載を同時並行しながら、スマホでゲームをしてたの。

バッテリーがヤバいわ。」


「そりゃそうだ。

それと、、、同時に一作が限度じゃなかったの?」

「作品が求めてくるんだから仕方ないわ。」


そうらしい。

まあ、無理をしなければどちらでも良いが。

そう思いながら、紗奈の頭を撫でているとぽすんと、僕の胸にもたれかかってきた。


当然、胸の辺りに紗奈の顔が来たので、自然と顔を紗奈に近づけ唇を奪う。

紗奈も応えるように顔を上げる。


もきゅもきゅ。


唇を離すと、紗奈は自分の口の周りをぺろりと舐める。

何かムラムラしたので、もう一度口を重ねてその紗奈の舌を絡めとる。


もきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅ、、、。


紗奈は枕側にあるベッドの棚にスマホを置く。

「つまりね、沢山のことが出来ないのに、沢山のことを同時にしようとすると上手くいかなくなるの。

だからそんな時は1番大事なことだけをするの。」


紗奈は上から乗っかるように、僕の口に自分の口を重ねてくる。

柔らかい感触が口いっぱいに、それと同時にどうしようにないほど甘美で甘い匂いが、どこかからしてくる。


もきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅ、、、。


「ぷはっ。」

息をし忘れるぐらい一生懸命だったらしい。

紗奈は身体を話し、腕で口元を拭く。


「、、、そういえば、改めて思うけどライトノベルの面白さって、マンガとかよりもずっと人によって感じるところ全然違うよね?」

「そう、なのかな?」


「う〜んとね?例えば、私もネット小説を読み出した最初の頃は、最強系とか転生系が好きだったのよね。

ざまぁ系や寝取り系とハーレム系は最初から嫌いだけど。」

「そうなんだ。

ああ、言われれば僕もだな。

それで幼馴染恋愛系はずっと好きだ。」


えへへ〜と紗奈がもたれてくる。

ヨシヨシと頭を撫でる。


「作品を否定する意味では一切無いけど、多分、今回カクヨムコンで選ばれた作品の大半は私は読まないと思う。」

「それはどうして?」

「とっても簡単な理由。

私が好きな『ジャンル』じゃないから。」

「あ〜、確かに。」


紗奈も決して作品の良し悪しを言っている訳ではない。

ただの趣味趣向の話だ。


「なるほど、なるほど、言っている意味が分かった。

確かにライトノベルで好みのジャンルではない作品はほぼ読まない。

言われてみれば、だ。」

「そういうところがライトノベルにおけるジャンル分けの重要性なんだと思う。」


なるほど、なるほどと僕は正直、目からウロコだった。

感情に直接訴えかける文章というものは、好みではないジャンルの世界観を受け入れるには、非常に難しいのだ。


「さて、颯太。」

「何、紗奈。」

「それはそれとして、今日の私は1番大事なことを優先することにしたの。」

「ほうほう。」


よいしょと紗奈が僕に乗っかってくる。

僕は思った。

あ、いつも通りだ。


「いっただきま〜す。」

そう言って、紗奈は僕の唇に何度もキスをする。

それを繰り返していると自然と僕らは口を求め合った。


もきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅ、、、。

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