3日目「キスマーク付けていい?」

「ねえ、颯太ふうた。キスマーク付けていい?」


僕のベッドの上で仰向けになりながら、スマホで小説を読んでいた紗奈さなは唐突にそう言った。


思わず僕は回転椅子を、くるりんぱと回転させた。


「流石にそれは駄目だろう?」


せいぜい、付き合っているカップルとかでもなければ、そんなことはすべきではないだろう。


「そうよねぇ、、、。マーキングってしてみたいなぁと思って。」


ぽちぽちとスマホでネット小説を見ながら、紗奈は呟く。

ちょっと、なんて言っていいか分からなくて、言葉が出なかった。


「何処の小説読んでるんだ?」


危ないところじゃないよね?

僕らはまだ16歳だよ?


「カ◯ヨ◯。」

「伏せ字にしなくても良くないか?」


ベッドの上で、上半身だけ身体を起こし、う〜んと紗奈は背伸びした。


「ネット小説を読んでて、なんで突然、キスマーク?」

「キスマークはマーキングのためよ?

マーキングは相手にマークを付けることよ?」


「ごめん、意味分からない。

紗奈、最近、変わったのばかり読んでるね?」


「そうかしら?

ラブコメには良くある、、、あれ?キスマーク付けるラブコメって、あまり見ないわね?

ところでキスマーク付けていい?」


紗奈は首を傾げつつ、突然、僕を獲物を狙う目で見る。

僕は椅子ごとベッドから少し離れる。

既に壁際だから、ほとんど動かないけれど。


「良くないけど?

そのキスマークつけて外に出て、僕はなんと言えばいいの?」


「幼馴染にキスマーク付けられたと言えば良いわ。」


「ねえ?それって、紗奈の方がダメージデカくない?自爆攻撃?」


ついに紗奈は、ベッドから降りてジリジリと僕に近寄って来る。

それでも可愛く見えるから、僕は重症だ。


「だ〜いじょ〜ぶ、怖くな〜い、怖くな〜い。ちょっと痕付くだけだから。蚊に噛まれたと言っておけば良いから。」


僕も椅子から立ち上がり、壁際に沿うように逃げる。


暫し無言。


紗奈はため息をつき、またスマホ片手にゴロリと転がった。

僕もホッとため息を吐き、今日のノルマの科学の勉強を再会した。


集中し過ぎて、無防備になっていた背中に誰かが。

紗奈だけど。


紗奈は僕の首筋に狙いを定め、、、。


ウチュー。


ぎゃーーー。

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