88日目「あああ!!なぜー!?何故なの!?」

「あああ!!なぜー!?何故なの!?」


僕のベッドで寝転んで、足をバタバタさせてご機嫌にスマホで小説を読んでいた紗奈は、突然雄叫びをあげた。


「どうした〜?」

最近は近づくとイチャイチャというか、もきゅもきゅしてしまうので、椅子から声をかける。


紗奈は僕を手招き。

、、、椅子をカラカラと近付ける。

紗奈と目が合う。


別のなにかを訴えてるのか、ジーッと僕を見る。


僕も目が離せない。

互いに諦めたように顔を近付け、唇をゆっくり感触を味わうように、重ねていく。

ついばむように一度動かして、離れる。


「、、、これ以上は止まらなくなるから、今はここまでね?」

紗奈が目を細めて笑う。

「そうだね。」

僕も柔らかく笑う。


「それで何?」

「ここよ!ここを見て!!」


タグ、というか、ジャンルが。

「ラブコメかぁ、、、本当に多いね、、、。話の展開と持って行き方も良い。

現代ドラマや青春、、、もしくは、いいや、せめて恋愛なら、十分に良い作品と言えただろうね、、、。」


ベッドをバフバフと叩く。

「悔しいわ!これがカ◯ヨ◯の限界と言うの!?

それは違う、違うの、ラブコメはラブのコメなの!

コメディも幅広いけど違うの!

シリアスな恋愛をするなら、恋愛でいいの!

迷わなくて良いの!」


僕は続きを読む。

「どうして、ジャンルを、、、。

ああ、そういうことか。

男主人公であることに拘ったら、ラブコメにせざるを得ないのか、、、。

案内されたジャンル区分を目安と見るか、厳密な区別と見るか。

そこで変わるね、そうか、だからか。」


「どういうこと?」

紗奈が涙を浮かべ、僕に尋ねる。

そんなに悔しいんだ?


「ルールだよ。カ◯ヨ◯のルールでは、言葉の意味での区別ではなく、イメージでの区別を優先している。

そのイメージはあくまでイメージだから、そこにギャップが生まれる。

ラブコメを男主人公のノリや勢い、『男として葛藤』、対して、恋愛はその女性版だ。イメージで分けている。


そして、紗奈も僕も、カ◯ヨ◯のイメージでジャンルを見ておらず、言葉の意味通りに恋愛、つまり悲恋も失恋も偏愛も純愛も含めたモノを恋愛とし、ラブコメを愛のコメディと見ている。


、、、つまり、最初っから視点が違うんだ。

タグ違いと思ってたものこそが、正しくもある、、、。」


紗奈はベッドの上でよろめく、真似をする。

漫画なら背後にベタフラッシュ、目は白眼になっていることだろう。

あくまでイメージだけど。


「そ、そんな、、、じゃあ、私たちはラブコメの何を信じて読めばいいというの!?」


僕は静かに首を振る。


「、、、信じるしかないよ。僕らと同じ志しを持っていると。

タグは目安として。」


紗奈はわざとらしく、ベッドの上で吠えるように上を向く。


「私は負けない!いつかラブでコメディを求め!イチャイチャがこのカ◯ヨ◯を支配するまで。」

それはそれで大問題な気もする。


そこで紗奈は普通にベッドに座り直す。

「話したら満足したから、ん!」

紗奈は求めるように、両手を僕に伸ばす。


「はいはい、お姫様。」

僕は苦笑いしながら、紗奈の両手の中に身体を入れる。

ガシッと掴まれた。


紗奈は両手を僕の身体に回しているので、無防備になっているので、そのまま紗奈の両頬を押さえる。


「はれ?」

「頂きます、よ。」

「、、、うん。」


さっきと同じように、ゆっくり唇を重ね、厚みのある感触をくにっと押し当てながら、唇で紗奈の口を開けさせ、そのまま舌を伸ばし、紗奈も自分の舌を出す。


もうお互い分かっているから、どちらも抵抗なんかしないし出来ない。

だからお互い目だけで、しょうがないよね、と苦笑いみたいな目をする。


そのまま、その状態で互いの口を優しく閉じた。

もきゅ、、、。


ほんと、これ、どうしようか。

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