176日目「私たちの物語のテーマって何かしら?」

「私たちの物語のテーマって何かしら?」


リビングでソファーに2人並んで座り、僕はiPadの勉強アプリを開き、紗奈は僕にもたれかかりスマホでネット小説を読んでいたが、唐突にそう言った。


「物語の?

、、、人生のっていう意味?」

「そう。

ラブコメにはテーマが必要だと思うの。

ヒロインと結ばれることなのか、ジレジレなのか、キュンキュンか、もしくはあまり認めたくないけれど、絶望とざまぁか。」

「ラブコメに限らず小説には、全て必要だね。」


紗奈はうんうんと頷く。

「私が『イチャイチャ幼馴染』を書いた時のテーマが『検証』だった訳だけど。

私たち自身の今のテーマってなんだろうって思って。」


成る程と僕も頷く。

紗奈は僕の肩にコテンと頭を乗せる。


「『イチャイチャ幼馴染』の時にもテーマそのものは『検証』であって、『イチャイチャ』がテーマだった訳ではないのよね。

時々、ラブコメを読んでて、その作品のテーマは何なのだろうと思うの。」

「、、、そうだねぇ。

僕たちの人生のテーマはなんだろうね。

2人でずっと一緒に居て得るものだろうね、、、。」


僕がそう言うと、ぴょこんと紗奈は起き上がり、僕の顔を目を輝かせて覗き込んでくる。

「そうね!

、、、実際ね、今、私たちがこうして一緒にいられて幸せを感じていても、やっぱり人生は大変でしょ?

だから、絶望感とか悲劇とか、ただでさえ人生苦しいのに、大好きなラブコメでまで感じたくないのよ。

だから、もしもそんな絶望感や悲劇や浮気や寝取りとか入れるのであれば、『テーマ』だけはしっかり通して物語を描いて欲しいと思うの。」


成る程ねと、僕は頷く。

僕の紗奈の頬に手を当てると、紗奈は頬に当てたその手をそのまま自分の手で包む。


「そうね、、、私が敢えて言うなら、テーマは『毎日を幸せに』、かな。」

「『日日是好日にちにちこれこうじつ』ってやつだね。

、、、もきゅもきゅではない?」

茶化すように紗奈に微笑みかける。


「もきゅもきゅは私たち自身みたいなものだもの。『テーマ』とは違うわ。」

紗奈もフッと笑う。


思わずお互いの顔が近付きかけていて、お互いがそれに気付き僕たちは笑い合う。

こんな温かな毎日を、そのために紗奈と頑張っていくのだ。


紗奈は僕の唇に、人差し指を当てる。

「あ、と、で、ね。」

わざとらしく紗奈はそう言って、ニシシっと笑った。

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