元魔王様と精霊の依頼 3
森を進んでいったジル達はゴブリン達と交戦していた。
「どんどん出てきますね。」
「さすがはゴブリンだな。放っておけばあっという間に増える。」
進めば進む程ゴブリンと遭遇する。
既に百体くらいは倒しているが際限無く出てくる。
魔物の中でも繁殖力の高い魔物なので直ぐに増えてしまう。
「これは集落の規模も大きいのではありませんか?」
長い間ベリッシ湖に近付く者はいなかったので、既にゴブリンの集落がかなり大きくなっている可能性がある。
「それもあるかもしれないがゴブリンシャーマンが倒されたのを知って呪花の回収に人員を割いているんじゃないか?」
ベリッシ湖周辺のゴブリンシャーマンを護衛していたゴブリン達は呪花を回収しようと言う動きも見せていた。
ゴブリン達にとって呪花はかなり重要なのかもしれない。
「何故倒された事を知っているんですか?あの場にいたゴブリンは全て倒しましたよね?」
「ベリッシ湖にいたゴブリン達を森の中から見ているゴブリンもいたのだ。そのゴブリンが集落に情報を持ち帰ったのだろう。」
空間把握で森の中にもゴブリン達がいるのをジルは気付いていた。
護衛を見張るゴブリンまで用意して警戒していたのだ。
「知っていたのに何故逃したんですか?」
「こうして向かってきてくれているからな。集落の方角を教えてくれているではないか。」
「成る程。」
ゴブリン種は基本的に賢くなく本能のままに行動する魔物だ。
相手の力量差なんて考えないので滅多に逃げたりはせず、やられたらやり返す脳筋魔物なのだ。
そのままゴブリン達を倒しつつ森を進むと大きな建造物が見えてきた。
周囲の木々が高いのでぎりぎり隠れられていると言ったところだ。
「森に隠れてここまでの集落を築いていたか。」
「もはや砦ではないですか!?」
ゴブリンの集落と言えば基本的には藁や材木を積み上げた簡素な物だ。
しかし今回発見したのは凄まじい大きさであり、人族の砦の様な物だった。
「これもベリッシ湖に住んでいた水の精霊が追い出されて人が寄り付かなくなった影響だろうな。冒険者が通っていたらゴブリンを定期的に間引いていただろうし。」
「くっ、こんな弊害があるとは。今日で全て片付けます。」
このまま放置しておくとかなりの被害が出そうな規模だ。
どれだけゴブリンがいるかは分からないがしっかりと殲滅しておきたい。
「訓練の成果を思う存分発揮してみろ。捕えられている人族はいないみたいだから全力でな。」
「相変わらず便利な魔法ですね。」
事前にジルの空間把握の魔法で付近一帯を調べてある。
ゴブリン種しかいないので遠慮はいらない。
早速二人で中に侵入すると多くのゴブリンがいる。
「ギャギャ!」
「殲滅します!」
リュシエルがゴブリンを相手に剣を振るって無双している。
さすがに高ランクでもないゴブリンに遅れを取ったりはしない。
数は凄まじいが一人でも対処可能だ。
「さて、お嬢が暴れ回っている内に我は呪花の処理でもしておくか。」
空間把握で呪花の位置は確認済みなのでその部屋へと向かう。
「ここか、随分と育てて貯めているな。火でも放っておけば全て燃えるだろう。」
「ギャギャ!」
「まだゴブリンシャーマンがいたのか。ちっ、陣形魔法か。」
侵入者のジルを見たゴブリンシャーマンが陣形魔法を起動させて部屋全体の床に巨大な魔法陣を浮かび上がらせる。
「身体が重いな。かなりのデバフを受けたか?」
「ギャッギャッ!」
詳しい効果は分からないが身体がかなり重くて動かしにくい。
動きが鈍くなったジルを攻撃する為にゴブリンシャーマンが仲間を呼び寄せる。
「まあ、このくらいハンデにもならんがな。ファイアアロー!」
「ギャッギャッ!」
ジルが火魔法を発動させてゴブリンシャーマンを呪花と共に焼き払おうとする。
しかし魔法は発動せず、それを見たゴブリンシャーマンが笑っている。
「発動しない?これも陣形魔法か?一先ず我を馬鹿にするのは不愉快だ。」
「グギャッ!?」
ジルは銀月を魔装して振るう。
魔力を帯びた斬撃を放ってゴブリンシャーマンを真っ二つにした。
デバフを受けたくらいでゴブリンシャーマン如き倒すのに支障は無い。
「思ったよりも面倒な仕掛けがされているな。お嬢は大丈夫か?」
ゴブリンシャーマンを倒したので魔法が使える様になったかと空間把握を試してみる。
しかし火魔法と同じく発動しない。
「やはり魔法が発動しないな。魔法を扱えないとなると事故もあるかもしれん。魔法陣を破壊して早々に向かった方がよさそうだ。」
「ギャギャ!」
リュシエルの下へ向かおうかと考えているとゴブリンシャーマンが呼び寄せたゴブリン達が部屋へと押し寄せてきた。
「ちっ、相変わらずワラワラと湧いてくるな。さっさと片付けるか。」
魔法を使えなくてもジルは持ち前の魔力や剣技を使って向かってくるゴブリンを次々に殲滅していった。
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