元魔王様と最強のメイド達 10.5
とある屋敷の地下、住むんでいる使用人すらも知らないこの場所を知っているのは、屋敷の当主だけである。
ここはその当主が、とある事をする際に使う為だけに作った場所だ。
その地下の一室の壁には、灯りとなる魔法道具が取り付けられており、その灯りに照らされて椅子に座る者の影だけがユラユラと動いている。
椅子に座る者は、深く眠っているかの様に項垂れたまま微動だにしない。
それは一日二日の事では無い。
数ヶ月と言う単位であった。
死んでいる訳では無く、意識は別の場所にあるのだ。
そして数ヶ月ぶりにその身体がピクリと震える。
項垂れていた頭が徐々に持ち上がり、身体を少し動かす度に関節がバキバキと音を鳴らす。
暫く同じ姿勢でいたので、身体が随分と凝り固まっていた。
と言ってもそれは今までにも何度か経験してきた事なので驚きは無い。
「ちっ、まさか失敗するとはな。」
久々に自分の身体に戻ってきた魔族は、開口一番に悪態を吐きつつ、牙を剥き出しにして怒りを露わにする。
予定ではこんな形で戻ってくる筈では無かった。
「あんな力を隠していたのも想定外だったが、あの人族、今度会ったらぶち殺してやる。」
魔族が思い浮かべるのは、長期にわたって自分が行なっていた任務を台無しにしたとある人族の男である。
仲間がイレギュラーと忠告してきていたが、その予想を遥かに超える人族だった。
「過ぎた事は仕方ねえ。俺達の
そう一人呟いて魔族が立ち上がる。
今回の標的は手に入れられれば、目的にかなり近付くと言った話しで、必ず欲しいと言う訳では無い。
なので失敗したのも仕方が無いと自分に言い聞かせて、溢れる怒りを鎮める。
そして目的の為に新たな行動に取り掛かる事とした。
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