元魔王様と浮島強化計画 2
天使族の対策としてシキが浮島の戦力強化を提案してきた。
「浮島は既にかなりの戦力を持っておる。ここから更に上げるのは難しそうじゃぞ?」
最高戦力であるジルを始め、鬼人族の姫であるナキナ、三人の従魔であるホッコにライムに影丸、元魔王軍のレイアとテスラ、前世の頃に自分を殺す為に作製した魔法生命体、更に影丸の配下として動いてくれるワーウルフやウルフ達とかなりの戦力だ。
「設備だけならばもう少しなんとかなるかもしれないが。」
「設備?何か新たに設置するのかのう?」
「昔作った魔法道具だ。」
ジルが無限倉庫の中から加工された魔石を取り出して、魔力を込めてから放り投げる。
その魔石が砂の上に落ちると周りにある砂が魔石に纏わり付いて徐々に人の形となっていく。
「砂の人形かのう?」
「これは魔石を核とした魔法道具、その名も魔石人形だ。」
「そのまんまじゃな。」
暇潰しに作った魔法道具なので名前も機能も特に拘っていないシンプルな魔法道具だ。
「ジルさん、これはどう言う魔法道具なのですか?」
「物は試しだ。ナキナ、戦ってみるといい。」
「了解じゃ。はっ!」
ナキナが砂の魔石人形に近付いて双剣の破魔の小太刀で十字に斬り付ける。
それで人形は四つに分たれて地面に崩れ落ちる。
「簡単に倒せてしまったのう。」
ジルが取り出した魔法道具の割には呆気なく倒せてしまって拍子抜けと言う感じだ。
しかし元魔王の頃に作った魔法道具がこの程度で終わる訳も無い。
「あっ、再生しているわ。」
「むっ。」
倒した魔石人形の魔石に再び周囲の砂が纏わり付いて砂の人形に戻っていく。
ナキナに斬り倒された砂の人形は直ぐに元の姿を取り戻した。
「この様に核となる魔石がある限り何度でも復活する。魔石によって身体を構成する物質は異なるが、ありふれた自然の物質を活用するので資源が枯渇する事も無く何度でも再生すると言う訳だ。」
環境に適した魔石人形を使えば核が無事で資源の枯渇が無い限り幾らでも再生してくれる魔法道具なのだ。
「この魔石人形は砂が身体の構成物質なのですね?」
「そうだ、魔石を所有していた魔物に依存する。」
既に何の魔物の魔石だったかは忘れたが、砂地に生息する魔物か砂系統のスキルを持っていた筈だ。
「何度も再生すると言うだけで厄介じゃな。」
「次は核を攻撃してみろ。」
「うむ、はっ!」
的確に核となっている魔石を両断するつもりで小太刀を振るう。
しかし魔石人形がその場を飛び退いた事でナキナの小太刀は空を斬る。
「避けたの!」
「それだけでは無い。核を狙われた事により反撃もしてくる様になる。」
「砂を操っているじゃと!?くっ!」
魔石人形の立っている地面の砂が盛り上がって砂の鞭の様になってナキナに襲い掛かってくる。
弱点である核をそう簡単に破壊出来る様には作っていない。
「身体を構成する物質がそのまま武器にもなる。まあ、あまり派手に動き過ぎると魔石の魔力が空になって動かなくなってしまうけどな。」
「ですがこれは防衛で使えそうですね。」
「訓練相手にもなりそうね。」
魔石人形自体はCランクくらいの強さしか無いが再生するのは厄介だろう。
長期戦になれば魔石人形の魔力は切れるかもしれないが、戦った者には疲労やダメージが蓄積される筈だ。
「せっかくだからナキナはそのまま訓練させてやろう。ほれ、追加だ。」
ジルが無限倉庫の中から魔石人形の核を複数個取り出して辺りにばら撒く。
砂以外にも土、石、水と様々な魔石人形が出来上がっていく。
「いきなり多過ぎるのではないかのう!」
「面白そうなの!」
悲鳴を上げているナキナと、それを見てワクワクしているホッコ。
魔石人形と戦ってみたいのだろう。
「ホッコも加わってくるといい。」
「やったの!」
ジルの許可を得て嬉々として飛び出していく。
二人でならば簡単に全滅出来そうだが、魔石人形を作るのは簡単なので核が全て壊されても問題は無い。
「ジル様、こんな魔法道具を持っていたのです?」
「把握していなかったのか?」
「魔石かと思って気にしていなかったのです。」
「そう言われると分かりづらいかもな。」
無限倉庫を共有しているシキだが殆ど魔石と見た目が変わらないので気付かなかったらしい。
そんなに強くないので封印指定されていなかったのかと思っていたが見逃していただけらしい。
「これを浮島に散らしておけば、それだけで防衛に役立ってくれるだろう。ついでに訓練相手にもよさそうだがどうだ?」
「浮島で使う分にはとても助かる魔法道具なのです。是非防衛の一つとして採用したいのです。」
魔石人形は攻撃しなければ反撃してこない。
配置しておいて敵が攻撃してくれば勝手に反撃してくれるので、魔石人形について知らない部外者には効果的な魔法道具となるだろう。
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