元魔王様と浮島強化計画 3
魔石人形の次は浮島の住人達だ。
「それじゃあ次は私達の強化ですね。」
そう言ってテスラが擦り寄ってくる。
ナキナとホッコが訓練中なのでここにはジルの前世を知る者しか残っていない。
「…テスラ、何をする気だ?」
「分かっていますよね?私達がパワーアップする方法。」
そう言って小さな舌で唇を濡らす様にペロリと舐める。
男を虜にするサキュバスの仕草に普通の者なら目をうばわれてドキドキするが、昔馴染みのジルとしてはそれを見てもそんな気持ちにはならない。
むしろその仕草に身体の力が抜けていく様な感じを覚える。
実際にこれから吸われれば力が入らなくなるだろう。
「今の我だとお前達に毎日吸われ続けるのはきつい。強化したいなら他をあたれ。」
レイアとテスラを強化すると言うより全盛期に近付けるには、吸血や吸精によって力を蓄える事が最善だ。
しかし魔王の頃ならば問題無かったが、今の人族の状態では身体が保たない。
トレンフルで出会った時や王都から帰ってきてから吸われた時は動くのも億劫になる身体の怠さであった。
久しぶりだったので吸い過ぎたと言うのもあるが、頻繁に吸われ続ければ同じ様な事になるだろう。
なので出来れば他の人種や魔物からも吸ってもらいたい。
そうすればその分ジルの負担も減ってあまり吸われずに済む筈だ。
「嫌ですよ。ジル様以外の精を吸収する気は無いです。美味しくないですし。」
「私も他の方よりはジル様の血を頂きたいです。一番美味しいですから。」
魔王時代に毎日の様に吸っていたからか、もうその味にすっかり慣れているらしく、他の者から吸うのを嫌がる様になった。
ジルにはよく分からないが、転生して人族になった今も味はそのままらしい。
「他の者だとそんなに味が変わるのか?」
魔王時代の自分も種族的に他者から力を吸い取る様な食事方法ではあった。
しかし神々の恩恵により直ぐに種族を超越した存在となり食事が必要無くなってしまったので、味が違ったかなんて覚えていない。
「それはもう!ジル様とそれ以外の男なんてドラゴンの肉とオークの肉くらい違いますね!」
「ジル様も転生されて食の喜びが分かる様になられました。なので私達の言う事もお分かりになられますよね?」
「ああ、分かるぞ。それが本当なのだとすれば我もドラゴンの肉を食べたいと思う。」
テスラの例え話しが本当かは分からないが二人にとってはそれだけの違いがあると言いたいのだろう。
オーク肉も一般的に食べられている美味しい肉ではあるが、市場に殆ど出回る事の無い超高級食材であるドラゴンの肉となると遥かに劣るだろう。
「ですよね!なのでジル様から吸わせて下さい!」
「無理のない範囲で構いませんので。」
そう言って二人がジルに迫ってくる。
早く吸血と吸精をしたいと思っているのだろう。
「ふむ、無理のない範囲と言っても二人にそれぞれ吸われると我は充分きついからな。よし、ならばこれを使うとしよう。」
「「これは!?」」
ジルが妥協案として無限倉庫の中から瓶を二本取り出して渡す。
それを見た二人が少し表情を引き攣らせている。
「久しぶりに見ただろう?まだ無限倉庫の中に在庫が残っていた。」
「魔王酒なのです?久しぶりに見たのです。」
シキの言う通り、渡した瓶の中身は魔王酒と言う名の酒だ。
元魔王ジークルード・フィーデンの魔力が溶け込んだ特別な酒である。
「これを一緒に少し呑めば、あの魔力が吸血と吸精の効果を大幅に高めてくれる。当時も時間が無い時は使っていたから効果は覚えているな?」
「それは当然知っていますが…。」
「今後毎回する度に呑むって事ですよね?」
使用した事はあるので二人共魔王酒の事は覚えていた。
だからこそ魔王酒にあまり良い思い出が無い。
「力を蓄えておきたいと思い、それで我を指名するのであればこれくらいは我慢してもらいたいな。」
「わ、分かりました。」
「うーん、これは仕方無いかな。了解です。」
その後二人が魔王酒をほんの少し呑んでからいつもの吸血と吸精を行った。
僅か数秒で二人が離れてくれる。
魔王の魔力が効果を大幅に高めてくれたおかげで短時間で済んだ為、ジルへの負担も殆ど無い。
しかしジルの負担が少ない分、二人は普段と違った。
ジルから離れたかと思えば、どちらも目を回して地面に倒れてしまったのだ。
「相変わらず凄く酔ってるのです。」
シキが言う通り二人は酔って倒れてしまった。
魔王酒に溶け込んだ魔王の魔力は行為の効果を大幅に高めてくれるだけで無く、酒の効果も大幅に高めてしまう。
なので少ししか酒を呑んでいなくても、顔を真っ赤にして目を回すくらい酔わせる破壊力がある酒となるのだった。
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