元魔王様とルルネットの可能性 10
手に入れた宝箱の数が3桁を超えてからも暫く宝箱を探し回り、ついにその時がきた。
「やっとそれらしいのがきたな。」
ジルの手には白色の刀身を持つ短剣が握られている。
紅色の短剣に並ぶルルネットに合う武器がようやく手に入った。
「対人戦に関しては良い短剣くらいでしかないが、魔物に対しては活躍しそうだな。」
白色の短剣の効果は火属性の適性を持つ者が魔装させると、魔力の代わりに白い炎を纏わせる事が出来る様になる。
その白い炎は普通の炎と違って魔物に対して非常に有効であり、攻撃力を飛躍的に高めてくれる。
魔物との戦闘では紅色の短剣以上の力を発揮しそうだ。
「これでやっと引き上げられるな。ここまでに相当な量の武具や素材が手に入ったし、暫く金には困らなそうだ。」
ダンジョンの深層の宝箱から出た物だけあってどれも価値の高い物ばかりだ。
セダンの街に戻ってからゆっくり換金していく事にする。
ルルネットへ渡す短剣も手に入ったのでダンジョンの天井に穴を開けて出口を目指す。
外に出ると日が高くまで登っており、それなりにダンジョンに潜っていた様だ。
「午前の訓練も終わっていそうだな。」
ジルが小島からブリジットの屋敷に戻ると丁度昼食を食べようとしていたので、ジルも一緒に頂く事にした。
ジル達がトレンフルに滞在する時間も残り少ないので、午後にはミュリットが挨拶にやってきた。
滞在期間中はジル達も世話になった。
「ミュリットもきているし丁度良い、渡したい物がある。」
「渡したい物ですか~?」
「ああ、午前中にルルネットの短剣を探しにダンジョンにいっていてな。その時に手に入った中で良さそうな物を世話になった礼として我から贈ろう。」
短剣を探す過程で沢山の宝箱を開けた。
そして多種多様な物を手に入れたので、せっかくならルルネット以外にも世話になった礼として渡す事にしたのだ。
「あらあら~、お世話になったのはこちらもなんですけどね~。」
シキには本来の目的であるブリジットが契約していた頃の後始末を手伝ってもらった。
これにより領地の発展に大きく貢献してくれた。
そして本人に自覚は無いがジルにはトレンフルの経済を大きく回してもらっていたりする。
大量の物資の購入やダンジョンから持ち帰った素材や魔石の売却により、個人とは思えない程にトレンフルの中で大きな金が動いており、街全体がかなり潤っていたりする。
「気にしないでくれ、我は必要としない物だからな。先ずはルルネット、約束の短剣を渡してやろう。」
「やたっ!わくわく!」
ダンジョン産の短剣と聞き、ルルネットは嬉しそうにジルの前に歩み出る。
既に短剣を壊されて落ち込んでいた気持ちは、新しい短剣を貰える事で消え失せている様だ。
「これだ、タイプCに鑑定してもらったが中々良さそうだったぞ。」
「はい、火属性の適性を持つルルネット様にピッタリかと思います。魔物に対して非常に有効な短剣です。」
今回も鑑定はタイプCが行った事にして三人に渡す事になっている。
「うわぁ、綺麗。」
鞘から抜いた白い刀身を眺めながら、うっとりとした表情でルルネットが呟く。
本来女の子がそう言う表情をするのはアクセサリーや宝石等を見た時ではないかと思ったが、喜んでくれているのであればそれでいい。
「ほんとに貰っていいの?」
「ああ、これからも訓練に励めよ。」
「うん!」
ルルネットが嬉しそうにしながら返事をした。
ダンジョン産の武器を二つも手に入れたルルネットの今後の成長に期待だ。
「続いてブリジットにはこれを渡そう。」
「私も宜しいのですか?」
ブリジットは名前を呼ばれて嬉しそうに尋ね返す。
「お前に一番世話になったんだし当然だろう。」
「ありがとうございます。」
ジルはブリジットに小さなリングを一つ渡す。
リングには鋭い突起が付いており、刺さるとかなり痛そうだ。
「それはナックルリングと言って近接武器の一つです。そして雷霆魔法の効果を高める魔法道具でもあります。」
ナックルリングは武器であり魔法道具でもある。
それを指に嵌めて相手に突き刺して攻撃する事も出来るし、雷霆魔法の補助道具として使う事も出来る。
「そんなに貴重な物を頂けるなんて。大切に使わせて頂きますね。」
ブリジットは早速指に嵌めて嬉しそうに眺めて言う。
物騒なリングだが指輪を貰った女性の様に喜んでいる。
この
「ミュリットにはこれだ。」
「まあ~、綺麗なネックレスですね~。」
ジルが渡したのは一見普通のネックレスの様に見えるが、これも特殊な効果が付加された魔法道具である。
「解毒効果のある魔法道具のネックレスです。」
「貴族は色々大変だと聞いたからな。」
前にブリジットに話しを聞いた際に、時には貴族同士でも相手を陥れる様な事があると聞いて、領主なんて一番狙われるのではないかと思ってこれを渡す事にしたのだ。
これを身に付けている限り、毒物を摂取しても瞬時に解毒されて本人には一切の害も及ぼさない。
「お心遣いありがとうございます~。備えがあって困る事は無いですからね~。」
ミュリットはニコニコと笑ってお礼を言い早速首に掛ける。
三人共ジルの贈り物をとても喜んでくれたので、ダンジョンで走り回ってきた甲斐があった。
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