75章
元魔王様と納品と勧誘 1
シャルルメルトから戻ってきてからは暫く美咲のダンジョン作りを手伝って共に楽しんだ。
天ちゃんと一緒に魔物を狩ってダンジョンポイントを貯めてダンジョンを発展させていく毎日だ。
そして美咲からはダンジョンポイントのお礼として異世界の物を貰う。
美味しい食べ物も良いが娯楽も素晴らしかった。
「王手なのです。」
「くっ、ここまでか。」
「シキの勝ちなのです!」
将棋と言う異世界の娯楽でジルとシキが対戦をしていた。
最初は互角だったのだが、何戦かする内にシキは誰にも負けない程の無双状態となった。
娯楽の知識すら求めるシキは、こっそり異世界通販のスキルを使って将棋に関する本を購入していたのだ。
見聞きした情報を完全に記憶出来るシキは様々な戦術を身に付けていたのである。
「将棋の王は情けないぞ。守られるだけの存在とは。」
シキに取られてしまった王を指に挟んで見ながらジルが溜め息を吐く。
「現実で考えちゃ駄目なのです。ジル様みたいな最前線で常に戦う王様の方が少ないのです。」
「将棋で言えば我は龍王だろうな。」
「あの頃のジル様は将棋で言えば盤面どこでも移動出来る様な規格外の存在だったと思うのです。駒には当てはまらないのです。」
魔王時代のジルは一人で何でも出来てしまう魔族の王だった。
遊戯の駒と同一に語るのは難しい存在である。
「二人共楽しんでますね。他にも娯楽が欲しくなったら言って下さいね。」
美咲が近付いてきてそう言ってくる。
まだまだ異世界の娯楽は沢山あるらしく美咲も久しぶりに遊んで楽しんでいた。
向こうでは美咲に負けて不貞腐れて眠っている天使が一人いる。
「暫くは将棋だけでいいぞ。あまり貰うと他に何もしなくなってしまいそうだ。」
「確かになのです。そろそろシキも浮島での実験や開発の日々に戻るとするのです。」
「我もそろそろ依頼を受けにいかないと冒険者カードが剥奪されてしまいそうだ。」
ここのところ浮島にこもって遊び過ぎた。
そろそろ活動を再開しなければ仕事をせずに引きこもりになってしまいそうだ。
「あらら、それでは娯楽はまたの機会ですね。」
「そうだな。だが異世界の食べ物は貰おう。美味い物は幾ら食べてもいい。」
「同感なのです。美味しい異世界料理は日々の楽しみなのです。」
「ホッコも食べるの!」
ジルとシキが異世界の料理を貰おうとしていると横で将棋の対戦を見ながらうたた寝していたホッコが飛び起きる。
美味しい食べ物の話題となって寝起きから元気だ。
「それじゃあまだ食べた事の無い私のお勧めをお出ししますね。」
美咲が出してくれた異世界の料理を皆で堪能する。
異世界通販のスキルと違って遠慮無くお代わり出来るところが素晴らしい。
ダンジョンポイントの為に魔物狩りの意欲も上がると言うものだ。
「さて、ギルドで依頼でも受けてくるか。ホッコも行くか?」
「主様と一緒に行きたいけど予定があるの。」
そう言ってホッコが申し訳なさそうにしている。
変化のスキルを得てからホッコは沢山の事が出来る様になった。
こうしてジルがいない間も自分のやりたい事を色々と見つけたいる。
「ちなみに何をするんだ?」
「天ちゃんと勝負なの!いっつも眠らされて負けるから今日は勝つの!」
やる気を漲らせたホッコがソファーで横になって眠っていた天ちゃんを見ながら言う。
今まで周りにいなかったタイプの強者なのでホッコの経験にもなる。
「ホッコは直ぐ眠ってくれるから勝つの簡単。」
「その内負かしてやるの!天ちゃん早速勝負なの!」
「眠いけどいいよ。」
元気に走っていくホッコの背中を追って天ちゃんがフラフラとした足取りで外に向かっていった。
浮島で暮らしている分ホッコの相手をしてくれている様だ。
「随分と溶け込んできたな。」
「浮島の皆さんは誰であっても優しいですからね。」
「記憶は相変わらずか?」
普段から天ちゃんと一緒にいる美咲が一番状況を把握しているので尋ねる。
「はい、取り戻している様子は無いですね。本人は今の生活に満足しているので全く気にしていないと言ってましたけど。」
「分からんぞ。元の記憶を取り戻した途端に化ける可能性もある。何か違和感があれば直ぐに我かメイド達に伝えてくれ。」
「了解です。」
美咲も天使族の脅威は何となく聞かされているので何かあれば直ぐに知らせてくれるだろう。
浮島で暴れられてダンジョンにも被害が及ぶのはダンジョンマスターとしても遠慮したいところだ。
「では我はギルドへ行ってくる。」
「行ってらっしゃいませ。」
美咲に見送られてジルは浮島から精霊商店へと繋がる魔法道具の扉を潜った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます