元魔王様とシャルルメルトの街 11
鉱山に到着した後は実に単純な作業が待っていた。
ダナンが結晶石を次々と採掘していくので、それをジルは無限倉庫に収納していく。
そしてたまに現れる魔物だがジルが出るまでもなくライムが瞬殺してしまうのでそれも収納していく。
「大量だな。運搬の心配が無いのは有り難い限りだ。」
ダナンが嬉しそうな声を出しながら新たな結晶石を掘り出している。
本来なら採掘した鉱石の運搬を考えて採掘量を決めるのだが、ジルがいれば好きなだけ採掘出来る。
「まさかこんなに掘り当てるとはな。我のスキルが無ければ何往復しなければいけないか分からん量だぞ。」
「そこも期待していたのだ。収納系スキル持ちは採掘現場にいると便利だからな。」
採掘現場では収納系のスキルや魔法道具は運搬の回数を大幅に減らしてくれるので重宝される。
それが収納容量無制限のジルであれば誰でも雇いたいと思うだろう。
「まあ、高い金を貰っているから文句は無いが荷物持ちだけとは退屈だな。」
今のところ無限倉庫のスキルを発動するだけの役割りだ。
ライムがいるので戦闘も一切参加していない。
「魔物も思ったより強いのがいないのです。いや、ライムが強過ぎるのです。」
「そのスライムははっきり言っておかしいぞ。Cランククラスの魔物も瞬殺するとは。」
ダナンはスライムの護衛なんている意味あるのかと最初は思っていたが、魔物との戦いを見てその異常性に驚いていた。
さすがはジル達の仲間と言ったところだ。
「ライムならそれくらい出来て当然なのです。最強のスライムなのです。」
シキの言葉に嬉しそうにプルプルと揺れている。
スライム種は魔物の中でも弱い部類の魔物なのだが、ライムは一般的なスライムと比較して強過ぎる。
これ程強いスライムは人生を通して見た事が無いとダナンも言っていたがそれも当然の事だ。
異世界通販のスキルにて購入したライムは他者を吸収して強さを増していくエボリューションスライムだ。
ダナンにも特殊個体と言う説明で通している。
既にその辺の魔物に簡単に負ける様な実力では無い。
「これでは我の出番は無さそうだな。」
「それは分からんぞ、公爵も言っていただろう?魔物に苦戦して採掘が上手くいっていないと。」
「絶好調の様に見えるのだが?」
鉱山に入ってからダナンの手足が止まる事は無かった。
直ぐに結晶石を掘り当てて、それをジルに渡すと直ぐに別の結晶石を掘り当てるのだ。
それを何度も繰り返していて、魔物が出てきても苦戦する様な状況にはなっていない。
「これは先に入った者達の取り残しだ。雑な掘り方ばかりで結晶石が鉱山の上の方にも多く残っている。魔物もこの辺りなら強くないから苦戦する筈も無い。」
そう言ってまたもや結晶石を掘り当てて渡してくる。
公爵が言っていたのはもっと深く潜っている者達の事だろう。
しかしそこに向かうまでも無く結晶石が余りまくっていた。
「それでもこんなに掘り当てられるのはドワーフだからなのです?」
「それもあるがスキルも関係している。わしは鉱石探知のスキルを持っているのだ。範囲はそれ程広くないからありそうな方へ勘で掘り進めているのもあるがな。」
ジル達からしても結晶石がある場所なんて一見すると分からない。
ダナンが簡単に見つけていたのはドワーフの勘とスキルによるところが大きいみたいだ。
「ほう、武具製作だけで無く鉱石採掘にも特化しているとは便利だな。」
「さすがはエルダードワーフなのです。」
「人を便利な道具の様な言い方をするな。」
「我を便利な運搬道具の様に扱っておいてよく言う。」
道具扱いはお互い様だ。
実際にそう感じてしまうし感じられてしまう。
「二人が組んだら最強の鉱石掘りコンビになりそうなのです。」
「「そんなコンビにはならん。」」
シキの言葉に二人の声が重なる。
お互いがどれだけ採掘現場に向いているとしても、鉱山の中で頻繁に過ごすのは遠慮したい。
「さて、奥には潜っていないが一度引き上げるか。」
「いいのか?我の収納量には限界は無いぞ?」
「ジルに無くてもわしにはあるのだ。無限に採掘作業が出来る訳無いだろう?」
「それもそうか。」
ドワーフであっても採掘作業をし続ければ疲れるのも当然だ。
かなりの量を採掘出来たので今日はここまでとした。
「久しぶりだったのもあって中々疲れた。」
「それでも随分と採掘出来たと思うのです。」
「そうだな、持ってきた金を半分くらいは使い果たしそうだ。」
結晶石を買い取る為にかなりの金額を用意してきたダナンだが、一日掘っただけで半分近くを使い果たせそうな成果だ。
「ならばあと二日もあれば終わりそうだな。我らの分も余裕で確保出来そうだ。」
「それなりに長期滞在を予定していたのだが、こんなに順調とは思わなかったぞ。」
ジルの分を含めても予定していたよりも大分早く終わりそうであった。
競争相手が多いので結晶石が殆ど取りやすい場所には残っていないと予想していたのだが、ドワーフから見れば雑な掘り方で沢山残されていたので助かった。
「だったらその分シャルルメルトで観光を楽しむのです。遠出してきたのに直ぐに帰るのは勿体無いのです。」
シキは久しぶりの遠出を楽しみたい様子だ。
ずっと浮島にこもっていたので丁度良い機会である。
「わしは構わないがジルはいいのか?」
「遠出も悪くないものだと王都で感じたからな。暇を潰せそうな事を何かしら見つけるから我も構わないぞ。」
「だったら決定なのです。シキもジル様と久しぶりのお出掛けが出来て嬉しいのです。」
ジルの了承を得られてシキは嬉しそうに飛び回っていた。
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