元魔王様と浮島の超高難易度ダンジョン 8
数分間も続く爆発が収まるのを待って爆煙の中に注目する。
爆煙が晴れるとアンドロイドγの姿がそこにはあった。
「なんと!?」
タイプDはそれを見て驚愕している。
しかし先程までとは明らかに違っていた。
「ジュウダイナソンショウヲカクニン。コウドウヲセイゲンシテ、セントウヲケイゾクシマス。」
アンドロイドγは半身をボロボロにしながらもタイプDの極級爆裂魔法を耐え切っていた。
そんな状態でも攻撃の意思を見せてくる。
こちらに向けられる手に膨大な魔力が集まる。
「ま、マスター?あれやばそうじゃないですか?」
タイプDが震える指で指し示しながら言う。
明らかに大技がくるのが分かる。
「魔法模倣のスキルを使ったのだろうな。タイプDが直前に放った魔法に。」
「どうしましょう!?もう私の魔力が無くなりそうなんです!?このままでは私達もボロボロになってしまいます!?」
アンドロイドγに極級爆裂魔法なんて放たれてもタイプDには相殺する魔力が残っていない。
先程の魔法で勝負を決めるつもりだったので魔力は殆ど使い果たしてしまったのだ。
「もっと魔力量を考えた戦い方をしろ。」
「だって耐えるとは思わなかったんですもん!?」
それを言われるとジルも確かにとは思う。
タイプDの高い魔法適性と魔杖・夢現から放たれる最高クラスの威力の魔法に耐えられる者がこの世界にどれくらいいるだろうか。
アンドロイドγの耐久力を侮っていたかもしれない。
「仕方無い。我が手助けしてやるから、タイプDは攻撃準備だ。今度こそ仕留めろ。」
「了解です!」
タイプDはジルを信じて魔法の準備をする。
極級魔法は放てなくても超級魔法くらいなら放てる魔力がまだ残っている。
「クラスターブリット!」
アンドロイドγが先程タイプDの使った魔法を放ってくる。
赤黒い玉が真っ直ぐ向かってくるがタイプDは慌てる事無く魔杖を構える。
「空間置換!」
ジルは周囲の空間とアンドロイドγの背後の空間とを入れ替える。
入れ替える空間の範囲や距離でかなりの魔力消費となる魔法だが相手の不意を付くには最適な魔法だ。
「イドウヲカクニン。」
「時空間魔法、鈍化!」
素早く対応しようとしたアンドロイドγだが、ジルが立て続けに魔法を使用する。
相手の全体的な行動を遅延する魔法である。
これによりタイプDの魔法発動に対処が間に合わなくなる。
「インパクトブレイク!」
至近距離から放たれた超級風魔法によりアンドロイドγは吹き飛ばされて壁に打ち付けられる。
元々かなりのダメージを受けていた事もあり、今の一撃でドロップアイテムになった。
「や、やりました!」
「今度こそ倒せたな。」
タイプDは喜ぶと言うよりは安心して座り込んでいる。
もう魔力も殆ど残っていない。
「それにしても強過ぎませんか?」
「攻略を前提に考えていないのがよく分かる。」
タイプAが言っていた言葉を思い出す。
こんなダンジョン普通の者達なら突破は不可能だ。
極級魔法を耐えてお返しに放ってくるなんてどこの化け物だと問いたい。
「お疲れ様でした。まさか初見で突破されるとは。」
「マスターもタイプDもやるじゃないか。」
「「お疲れ様です。」」
そう言いながら現れたのは美咲やメイドゴーレム達だ。
ボスを倒した事により奥の方に転移魔法陣が現れている。
「かなりの難易度だったな。最後のアンドロイドγは相当手強かったぞ。」
「そう言う風に作ったんだから当たり前だろ。」
「ダンジョンコアのある部屋を守る最後のボスですからね。私からの支援も出来る最強の守護ボスにしてみたんです。」
やはりあのスキルの追加は美咲の仕業だった。
相手に合わせてスキルの支援を受けられるなんてとんでもないボスである。
「そんな事よりドロップを確認してみろよ。」
「確かに!あれだけの強さですから、さぞかし良い物がドロップしたに違いありません!」
タイプAに言われてタイプDが走って取りに向かう。
何やら掌サイズの玉の様な物がドロップしている様に見えた。
「マスター、何ですかこれ?」
タイプDがドロップアイテムの玉を持ってきて見せてくる。
ジルは万能鑑定を使用して視てみた。
「武器強化の神玉?我も初めて見るな。」
魔王時代を入れても初めて見る物だった。
名前から相当価値のある物だと言うのが分かる。
「アンドロイドγは倒される事を想定していません。なのでドロップアイテムも私が買える最高の物を用意してあります。」
「それはどんな武器でも更なる高みへと昇華させる事が出来るやばい魔法道具だな。マスターの銀月でもタイプDの魔杖でも何でもだ。」
この世界最高峰のエルダードワーフが作った武器でも魔王が作った神器級の武器でも何でも強化出来るらしい。
そんな魔法道具がこの世界に存在していたなんて知らなかったが、この性能なのでそう簡単に手に入る訳も無いだろう。
「それは凄まじいな。」
「更なる強さが手に入る!」
タイプDはそれを聞いてジルの方をじーっと見てくる。
その表情に欲しいと書いている様に見える。
「分かった分かった。これはタイプDにくれてやる。」
「いいんですか!?」
「今回のダンジョン攻略を頑張ったからな。魔杖に使ってやれ。」
「マスター、ありがとうございます!」
ジルから許可をもらって満面の笑みを浮かべるタイプD。
活躍を評価されたのと相棒である魔杖が強化される事で二重に嬉しい。
「武器と玉を魔装して近付けてみろ。」
「分かりました!」
タイプAに言われた通りに二つを魔装して近付ける。
すると玉が魔杖と重なって消える。
「わわっ!?玉が吸い込まれてしまいましたよ!?」
「俺も初めて見るがそれで問題無い筈だ。マスター、どうだ?」
万能鑑定で確かめてくれと言っているのだろう。
お望み通り視てみると武器の名称が変化していた。
「神杖・夢現となっているな。」
「神の杖ですか!強そうです!」
新たに強くなった杖を手に入れてタイプDは嬉しそうに神杖を掲げていた。
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