元魔王様と浮島の超高難易度ダンジョン 7

 タイプDから放たれる魔法を回避しながらアンドロイドγが部屋を駆け回る。


「ぐぬぬー!ウエイトフィールドを常に展開していると言うのに!」


「さすがは耐性持ちだな。重力魔法の効果を殆ど受けていないとは。」


 アンドロイドγの動きを遅くする為に重力を掛けているのだが平然と攻撃を回避される。

全攻撃耐性のスキルが良い仕事をしている。


「やはり上級くらいではお話しになりませんか!ですが一瞬足止め出来れば上級でも充分ですよ!ウインドケージ!」


 アンドロイドγを包む様に風の檻を展開する。

一瞬で剣によって斬り裂かれてしまうがその一瞬が欲しかった。


「エクスプロージョン!」


 僅かに動きを止めたアンドロイドγに超級爆裂魔法が直撃する。

階層を揺るがす程の大爆発を巻き起こしてボス部屋全体に轟音が響き渡る。


「拘束からの爆裂魔法か。」


「直撃ですよ!」


 タイプDは手応えを感じている。

適性の高さと魔杖から放たれる爆裂魔法の威力は凄まじい。

そう簡単に受け切れるものではない。


「ソンショウケイビ、ゲイゲキシマス。」


「全然効いてないです!?」


 アンドロイドγは表面を多少焦げさせた程度でまだまだ戦える様子だ。

まさか殆どダメージを与えられていないとは思わずタイプDが驚愕している。


「厳しそうなら変わってやるぞ?」


「冗談でしょう!マスターは黙って観戦していて下さい!超級土魔法、ロックカノン!」


「キザミマス。」


 タイプDが巨大な岩を空中に生み出して放つがアンドロイドγに一瞬で細切れにされる。

タイプDによって強化された超級魔法をものともしていない。


「くっ、超級魔法まで!ってやばいです!?」


「キザミマス。」


 眼前まで迫っていたアンドロイドγの剣を直前で上に逃げて回避する。

重力魔法が無ければ危ないところであった。


「あ、あっぶなー!」


 あと少しで斬られていたのでタイプDが大きく息を吐いて安心している。


「ジョウクウ二ヒナンサレタタメ、ゲイゲキデキマセン。」


 アンドロイドγは上にいるタイプDを見上げながら呟く。

そこまで届く攻撃が無い。


「ここから終わらせてやります!」


 降りなければ攻撃される心配も無い。

安全圏から一方的に攻撃して終わらせようとしている。


「ゲイゲキスキルヲショモウシマス。」


「なんだと?」


 ジルはアンドロイドγの呟きを聞いて万能鑑定を使用する。

すると突然アンドロイドγが新しいスキルを取得した。


「マスター、そろそろ終わらせますねー!」


「タイプD、結界を展開しろ!」


「へ?」


 上にいてアンドロイドγの呟きが聞こえていないタイプDにジルが指示を出す。


「ロックカノン!」


「どわー!?」


 突然アンドロイドγから放たれる巨大な岩に慌てて結界を展開する。

ジルに言われていたので即行動に移せた為なんとか間に合って防ぐ事が出来た。


「ななな何ですか!?何でアンドロイドγが土魔法を!?」


 タイプDは訳が分からず混乱している。


「スキルが増えている。」


「どう言う事ですか!?」


「言った通りだ。先程万能鑑定で視た時には無かった魔法模倣と言うスキルが増えた。」


 突然スキルが増えたが、アンドロイドγの言葉通りであれば誰かからスキルを付与されたのだろう。

そしてそんな事が出来るのはこのダンジョンの主くらいだ。


「私の魔法を模倣したって事ですか!?なんと厄介な!」


「威力は魔杖の分低いが油断するなよ。」


「了解です!」


 自分の魔法がアンドロイドγの戦力に加わったと知ってタイプDは気合いを入れ直す。

もう安全圏など無くなってしまった。


「エクスプロージョン!」


「それならこっちもエクスプロージョンです!」


 互いの爆裂魔法がぶつかりあって二人の間で大爆発が起きる。

威力ではタイプDが優っているがアンドロイドγの威力も中々に高い。


「相殺は出来ますけど威力が高いですね!?」


「ユウコウナコウゲキトハンダンシマス。エクスプロージョン!」


「くうっ!?」


 タイプDが嫌がっている様子からアンドロイドγが再び超級爆裂魔法で攻める。

消耗の激しい超級魔法を連発すると魔力消費がとんでもないのでタイプDは空中を飛んで回避する。


「エクスプロージョン!エクスプロージョン!エクスプロージョン!」


「どんだけ連発してくるんですかー!?」


 絶叫しながら空中を飛び回るタイプD。

数秒前までいた場所が大爆発しているので動きを止める訳にはいかない。


「魔力の底が無い可能性があるな。逃げているだけでは勝てんぞ?」


「こうなったら本気でいきますよ!マスターの結界が割れても知ったことではありません!」


「そこは知っておけ。」


 何やら大技を放つ気配を感じる。

ジルは急いで自分を守る結界の層を厚くして耐える姿勢に入る。

台詞から察するにおそらく高威力の極級魔法だろう。


「極級爆裂魔法、クラスターブリット!」


 タイプDが魔杖の先端から赤黒い玉をアンドロイドγ目掛けて放つ。

それが着弾すると同時に大きな爆発がアンドロイドγを包み、その後爆煙の中から大量の爆音が連続的に響き渡る。


「粉々になるがいいです!」


「全く、まさか極級爆裂魔法を使うとは。」


 ジルは隣りにいるタイプDに呆れた様な視線を向けて言う。


「あれ?マスターいつの間に上に?」


「お前が我を巻き込む様な魔法を放つからだ。さすがにあの魔法は我の結界でも耐え続けられん。」


 タイプDが放った魔法を見て即座に重力魔法を使用して上に避難していた。

この魔法は余波だけでもとんでもない被害を受ける事になる。

地上では今も連続的な爆発が絶え間無く続いているのだ。


「ふっふっふ、マスターすら警戒するのですからアンドロイドγもひとたまりもないでしょう!」


 今まで使用してきた魔法とは文字通り火力が違う。

タイプDが使用出来る魔法の中でも最高クラスの火力を持っている。


「全攻撃耐性のスキルを持っているからまだ分からんぞ。」


「え?これを耐えられたらさすがに厳しいのですが?」


 ジルの言葉に少しだけ不安そうになるタイプDだった。

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